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こんにちは。採用管理システムsonar ATSを運営するsonar ATS編集部です。
本記事は、「時短勤務では給料がどのくらい減るのか気になる」「時短勤務における注意点を知りたい」というビジネスパーソンや人事担当者に向けた内容です。
時短勤務は、労働者が子育てや介護と仕事を両立させるための仕組みです。しかし、「時短勤務の給料はどのくらい減るのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、時短勤務で給料が減るケースや具体的な給料の計算方法について解説します。また、2025年度に施行予定の新制度についてもわかりやすく紹介します。
時短勤務を希望する人材は、通常勤務の社員とは異なるニーズや条件を持つことが多いため、採用や管理の方法にも工夫が必要です。
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目次

時短勤務とは、働き手が子育てや介護と仕事を両立するため、通常の労働時間より短い時間で働ける制度です。この制度は育児・介護休業法に基づいて実施され、育児と介護のそれぞれで具体的な規定があります。
育児に関する時短勤務制度は、以下のように定められています。
- 3歳未満の子を養育する労働者が申し出た場合、企業は所定労働時間を短縮する措置を講じる必要があります(育児・介護休業法第23条第1項)。
- 短時間勤務の標準は、1日6時間とされています(則第74条第1項)。
なお、時短勤務が難しい職種の場合は、フレックスタイム制や事業所内に保育施設を設置するなどの対策を講じなければなりません。
また、介護の場合は以下のように定められています。
常時介護が必要な家族を持つ労働者が申し出た場合、対象家族1人につき、次のいずれかを利用可能とする必要があります(3年以上の期間内で2回以上の利用を可能とすることが条件)。
- 所定労働時間を短縮する制度
- フレックスタイム制
- 始業・終業時刻の繰上げや繰下げ
- 介護サービス費用の助成など
(育児・介護休業法第23条第3項)
育児・介護のいずれの場合も、労働者が時短勤務を申し出た際、企業には対応する義務があります。しかし、労働者の労働時間は通常勤務と比べて減少します。そのため、企業側は給料を調整することになります。

時短勤務を導入する際には、給料減額の仕組みを適切に整えましょう。育児・介護休業法では、給料の減額について具体的な規定はありません。そのため、以下の2つの基本原則を理解し、対応を検討する必要があります。
ノーワーク・ノーペイの原則とは、「働いた時間に応じて給料を支払う」という考え方であり、労働基準法第24条に基づく給与計算の基本原則です。この原則は、労働時間に比例して給与が支払われることを意味します。
時短勤務の場合、労働時間が短縮された分、給与も減額されるのが一般的です。ただし、減額が労働者にとって不公平とならないよう、企業は慎重に制度設計を行わなければなりません。
不利益取扱の禁止は、時短勤務を利用する労働者に対する解雇や不当な扱いを防ぐために定められた法律です。具体的には、以下のような行為が禁止されています。
時短勤務を理由とした降格や減給は明確に禁止されています。また、労働者が同意しない限り、パートタイム社員などの非正規社員への変更も認められません。
パートタイム社員などの雇用形態について理解を深めたい方は、こちらの記事もご覧ください
雇用形態への理解を深めよう!種類で異なるメリット・デメリット・待遇について

時短勤務を実施する際、勤務形態によっては給料が減少することが想定されます。まずは、給料が減る3つのケースについて解説します。
固定時間制とは、従業員が就業規則で定められた時間帯に勤務する制度です。通常、1日8時間・週40時間という法定労働時間内に収まるように労働時間が設定されます。
この制度を採用している企業では、労働時間に基づいて給与が計算されます。そのため、時短勤務により勤務時間が短縮されると、基本給も比例して減少します。
例えば、所定労働時間が8時間で基本給が40万円の労働者が、2時間時短勤務を行い所定労働時間が6時間となった場合を考えましょう。この場合、労働時間が3/4に減少するため、基本給も3/4減の30万円になります。
フレックスタイム制とは、一定期間内(最長1か月)の総労働時間を定めることで、従業員が始業・終業時刻を自由に調整できる制度です。変形労働時間制の一種であり、柔軟な働き方を実現する仕組みとして注目されています。
この制度では、一定期間内の総労働時間に応じて給与が決定します。そのため、総労働時間が少ない場合は基本給も比例して減少します。この点は固定時間制と共通しています。
フレックスタイム制は時短勤務と併用することも可能です。時短勤務で定められた総労働時間を満たす限り、始業・終業時刻は自由に調整できます。ただし、一部の企業ではコアタイムを設定している場合があるため、事前に確認するようにしましょう。
フレックスタイム制についてさらに知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
コアタイムの意味・目的とは?フレックスタイム制度を導入するメリット!フレキシブルタイムとの違い
時給制とは、労働時間に応じた単価(時給)があらかじめ設定されており、働いた時間に応じて給与が支払われる制度です。そのため、時短勤務を選択すると給与は減少します。
たとえば、時給2,000円で1日8時間勤務した場合、1日の給与は16,000円です。しかし、時短勤務で6時間勤務に変更した場合、1日の給与は12,000円となり、2時間分の給与が減少します。
2025年度から施行予定の「育児時短就業給付」では、時給制の労働者に対しても賃金減少の緩和を目指しています。ただし、減少分を完全に補てんできる制度ではありません。時短勤務を選択する場合は、長期的な収入計画を立てるようにしましょう。

勤務形態によっては、時短勤務を選択した場合でも給料が減らない場合があります。続いて、給料が減らない2つのケースについて解説します。
裁量労働制とは「みなし労働時間制」の一種であり、所定労働日に一定時間働いたとみなされる制度です。そのため、労働時間や始業・終業時刻の管理は必要ありません。
給与は、労使間で合意した「みなし労働時間」を基準に支払われます。そのため、実際の労働時間が短縮されても給与に影響はありません。例えば、みなし労働時間が1日8時間と定められている場合、実働時間が6時間であっても8時間分の給与が支払われます。
裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があり、いずれも厚生労働省が定める特定の職種にのみ適用されます。「専門業務型」には、放送番組の監督やゲームソフトの制作業務などが含まれます。一方、「企画業務型」は、事業運営の中心となる企画、立案、調査業務が該当します。
参考:
専門業務型裁量労働制について|厚生労働省
企画業務型裁量労働制について|厚生労働省
成果主義とは、勤続年数や労働時間を考慮せず、成果や成績に基づいて給料が決まる制度です。そのため、時短勤務であることは必ずしも給料に影響しません。成果を上げることができれば、フルタイムの従業員と同様に評価されることが可能です。
ただし、時短勤務であるがゆえに必要な業務を遂行できず、結果として思うように成果が出ないケースも考えられます。その場合は、給料が減少する可能性があります。
企業が成果主義の導入を検討する場合は、十分な説明と労働者への配慮が必要です。給与が減少する可能性がある場合は、労働者にとって不利益な変更とみなされる可能性があります。

時短勤務による給与の増減について理解したところで、実際の給与計算方法について見ていきましょう。ここでは、基本給をベースにした計算方法と、残業や深夜労働が発生した場合の計算方法について詳しく説明します。
1か月の基本給をベースに計算する場合、通常の労働時間に対する基本給を基に、時短勤務中の労働時間を考慮して算出されます。計算式は以下の通りです。
時短勤務の基本給=通常勤務の基本給×(時短勤務の所定労働時間÷通常勤務の所定労働時間)
例として、所定労働時間が1日8時間で基本給が40万円の労働者が、時短勤務によって所定労働時間を1日6時間に短縮した場合を考えましょう。この場合、以下のように計算できます。
時短勤務の基本給=40万円×(6時間÷8時間)=30万円
時短勤務の場合も、従業員の合意があれば法定外残業は認められています。法定外残業とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて行われる残業を指します。この場合、企業は少なくとも25%の割増賃金を支払うことで対応します。
残業代の計算式は以下の通りです。
残業代=1時間当たりの給与×残業時間数×1.25
所定労働時間が1日6時間、1か月の基本給が30万円、営業日数が20日の場合を考えます。この時短勤務労働者が、月に5時間の残業を行ったときの残業代はいくらになるでしょうか。
1時間当たりの給与と残業代は以下の通りです。
1時間当たりの給与=30万円÷(6時間×20日)=2,500円
残業代=2,500×5時間×1.25=15,625円
法定外残業や法定内残業については、以下の記事で詳しく説明しています。それぞれの定義や違いが知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
就業時間とは?法律上の定義や労働時間との違い、計算方法を詳しく解説
残業同様、労働者の同意があれば深夜労働も原則として認められています。深夜労働とは、22時から5時までに行われる労働を指します。企業は、労働時間に対して少なくとも25%の割増賃金を支払う必要があります。
深夜労働代=1時間当たりの給与×深夜労働時間数×1.25
また、深夜労働が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えていた場合、さらに残業代も支給する必要があります。
ここでは、所定労働時間が1日6時間、1か月の基本給が30万円の時短勤務労働者が、月に1度だけ22時から24時の間に深夜労働を行った場合を考えます。
その日は12:00から勤務していたとすると、合計の労働時間は12時間となり、4時間分は法定外残業に該当します。1時間当たりの給与は2,500円とします。
残業代と深夜労働代は以下の通りです。
残業代:勤務時間20:00~22:00(法定外残業2時間)
2,500×2時間×1.25=6,250円
残業代+深夜労働代:勤務時間22:00~24:00(法定外残業2時間+深夜労働2時間)
2,500×2時間×1.50(1.25+0.25)=7,500円
時短勤務は労働者が仕事と家庭を両立しやすくするための制度です。そのため、頻繁に残業や深夜労働を行う状態は早急に改善される必要があります。
時短勤務中は賞与(ボーナス)の減額についても注意が必要です。基本給が減ることで、賞与もその影響を受け、結果として年収額が大幅に減少する可能性が考えられます。特に、賞与の支給額が「基本給の〇カ月分」と定められている場合は注意が必要です。
生活に支障が出ないようにするためには、早い段階で制度の詳細を確認しておくことが重要です。上記の計算方法も参考に、必要に応じてシュミレーションを行いましょう。

労働者から時短勤務を希望する申し出があった場合、企業側はいくつかのポイントに気を付ける必要があります。ここからは、企業が気を付けるべき3つのポイントを解説します。
時短勤務を行う従業員は、時短勤務前の社会保険料をそのまま支払うことになります。なぜなら、社会保険料は毎年4月~6月の平均給与を基に1年間の徴収額を決定する仕組みだからです。
ただし、育児休業後に時短勤務を開始した場合は、社会保険料が減額される特例措置が適用されます。この措置は、育児・介護休業法が定める「育児のための短時間勤務制度」を利用する場合に限られており、介護やその他の理由で時短勤務を行う場合には適用されません。
この手当により、時短勤務による給与の減少に応じて保険料も軽減されます。子どもが3歳になるまでの期間、この特例が適用されます。
この特例措置を受けるためには、被保険者が会社を通じて「育児休業終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出する必要があります。該当する従業員に対しては、企業側から呼び掛けるようにしましょう。
時短勤務の労働者に対して、年金に関する手続きを告知することも欠かせません。「育児のための短時間勤務制度」を利用して標準報酬月額が低下した場合、特定の手続きを済ませれば将来の年金額を維持することができます。
この仕組みは「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」と呼ばれています。具体的には、労働者が会社を通じて「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を日本年金機構へ提出する必要があります。
この手続きを行うことで、育児休業に入る直前の標準報酬月額と同等の収入があったとみなして年金額が計算されます。注意事項については、日本年金機構のHPをご覧ください。
時短勤務の労働者の給与を減額する場合、企業はその内容を就業規則に明記する必要があります。これは、労働基準法第89条で賃金に関する事項の記載が義務付けられているためです。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければなりません。変更した場合も同様です。
第二号 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算および支払方法、賃金の締切りと支払時期、並びに昇給に関する事項。
誤解を防ぐため、就業規則には可能な限り具体的に記載することが推奨されます。特に、以下の項目を盛り込むと良いでしょう。
さらに、申請窓口や相談窓口の情報も併せて告知すると、制度の運用がより円滑になります。
企業によっては、時短勤務者であっても給与が減額されない場合があります。その場合は、他の従業員が不公平を感じないような配慮が必要です。制度の趣旨や目的をきちんと説明し、全員が納得して業務に取り組めるようにしましょう。
また、勤務時間が短いゆえに、時短勤務者が決められたタスクをこなすことができない場合も考えられます。この場合も、他の従業員の不満の原因になりかねません。業務の進捗や成果に問題が見られた場合は、早急にタスク量を調整しましょう。
時短勤務は、従業員が家庭と仕事を無理なく両立するための制度です。企業には、全員が気持ちよく働けるような配慮が求められます。
時短勤務者の労働時間は原則6時間です。労働時間が6時間以下の場合、休憩を与える義務はありません。
しかし、労働基準法第34条では、「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。
労働時間がちょうど6時間であれば休憩を与える義務はありません。ただ、6時間を1分でも超えると45分の休憩を与える必要があります。
これらの法律を正しく理解し、企業と労働者の間で認識を共有しておくことが重要です。

ワークライフバランスへの注目の高まりや、子育て世帯への支援が強化される中、2025年4月1日から「育児時短就業給付」が施行されます(雇用保険法第六十一条の十二)。この制度では、時短勤務を行う労働者の賃金支援が強化されます。
ここでは、育児時短就業給付によって、給与がどう変わるのかや、抑えておくべき注意点について解説します。
育児時短就業給付とは、育児のために短時間勤務を選択した労働者に対して支給される新たな給付金です。具体的には、2歳未満の子供を養育している労働者が時短勤務を行った場合、その賃金の一部を補填する仕組みが設けられます。厚生労働省が発行する資料では、以下のように定められています。
- 被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合の新たな給付として、育児時短就業給付を創設。
- 給付率については、休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する観点から、時短勤務中に支払われた賃金額の10%とする。
この制度により、将来に向けて安定した生活基盤を維持できる効果が期待されています。
子育て世帯を支援する「育児時短就業給付」にはいくつかの注意点があります。
新制度の開始時には、少なからず混乱が起きることが予想されます。申請を予定している労働者はもちろん、企業側もこれらの注意点について理解することで、スムーズに申請を進めることができます。
より詳しい条件については、以下の資料をご覧ください。
参考:令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について|厚生労働省
時短勤務制度は、労働者が育児や介護と仕事を両立するために欠かせない手段です。この制度を適切に活用することで、企業にとっても大切な社員が育児や介護を理由に離職する事態をある程度防ぐことができます。
時短勤務の導入を検討する際には、労働者と企業の間で十分なコミュニケーションを図ることが重要です。制度の運用方法や期待される成果について話し合うことで、双方にとってのメリットを最大限に引き出せるでしょう。
本記事が、時短勤務に関心のあるビジネスパーソンや企業の担当者にとって、少しでも参考になれば幸いです。
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