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「試用期間」とは、本採用前に社員の適性を見極めるための期間のことを指します。法律で明確に定義されているわけではありませんが、アルバイトや正社員として本採用される前に設けられることが一般的です。
試用期間中の解雇は、本採用後の解雇よりも認められやすいとされていますが、理由によっては不当解雇と判断される可能性があります。トラブルを防ぐためにも、試用期間中の解雇を検討する際には十分な注意が必要です。
本記事では、試用期間中の解雇が不当解雇に該当する理由や注意点について解説します。「試用期間中の解雇について理解を深めたい」とお考えのご担当者様は、ぜひご一読ください。
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試用期間とは、本採用前に社員の適性を見極めるための期間です。正社員だけでなくアルバイトにも適用されることが多く、必須ではありませんが多くの企業で3~6か月程度の期間が設定されています。書類選考や面接ではわからない実際の業務での適性を確認するために、一定の期間が設けられているのです。
では、試用期間中とその後で労働条件や契約内容にどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、試用期間中の雇用条件や労働契約、解雇のルールについて詳しく解説します。
試用期間中の雇用条件(給与や福利厚生など)は企業によって異なります。本採用時と同様の条件を設定する企業もある一方で、本採用時よりも低い給与や制限された福利厚生を設定する企業もあります。
試用期間中の企業と労働者の契約関係に関しては、「解約留保付雇用契約」が成立していると捉えられています。「解約留保付」とは、通常の解雇よりも広い範囲において解約が認められることを意味しています。
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試用期間中であっても解雇することは可能です。解雇については、労働基準法第20条で以下の通りに定められています。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
試用期間中であっても勤務日数が14日を超えて働いている場合は、この解雇予告の規定が適用されます。一方、勤務日数が14日以内の場合は、解雇予告を行う必要はないとされています。
ただし、合理的な理由がない場合の解雇はもちろん認められません。労働契約法第16条では、解雇について以下のように定められています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

試用期間中の解雇と似た意味を指す単語として、本採用拒否が挙げられます。本採用拒否とは、試用期間を経た従業員が正式に採用されないことを指します。解雇のタイミングが、試用期間中か試用期間終了直後かという違いです。
次の「試用期間中の解雇における注意点」で詳しく解説しますが、「本採用拒否」と比較して「試用期間中の解雇」は「試用期間を待たずに急いで解雇した」と判断されやすいです。そのため、「試用期間中の解雇」の方が不当解雇とされる可能性が高くなる傾向があります。
解雇に加え、社員が退職の意思を表明することによる「依頼退職」について理解を深めたいご担当者様は、こちらの記事もおすすめです。
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前述の通り、労働契約法第16条では「客観的な合理的理由」がない場合や「社会通念上相当である」と認められない場合には解雇が無効となるとされています。
では、どのような理由であれば試用期間中の解雇が成立するのでしょうか。ここでは、試用期間中の解雇が成立しやすい以下の4つのケースについて解説します。
試用期間中に病気やケガが理由で働くことが難しい場合、多くの人が休職という選択肢を取る場合でしょう。復職後に簡単な仕事すらも遂行できないと判断された場合に限り、病気やケガが理由で解雇することができます。
しかし、復職後にも関わらず以前と同じ業務を割り当てたり、必要なサポートを提供しなかった場合には、不当解雇とみなされる可能性があります。
また、労働基準法第19条では、業務中の病気やケガにより休職をやむを得ない場合の解雇について、療養のために休職する期間とその後30日間は従業員を解雇することができないと定めています。ただし、療養開始から3年が経過しても治癒しない場合、打ち切り補償を支払うことで解雇の制限が解除されます。また、労災による傷病補償年金が支給されているケースでも解雇が認められます。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
試用期間中に無断欠勤や遅刻が多発し、それに対する指導を行っても改善が見られない場合、正当な解雇事由と認められることがあります。
無断欠勤や遅刻はチームの士気に悪影響が出たり、会社の損失に直接的につながる可能性があるからです。ただし、指導や改善の機会を提供したことが前提となります。
また、「解雇予告除外認定」において、原則として2週間以上無断欠勤が続く場合は、予告なく解雇することができると認められています。
原則として二週間以上正当な理由もなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
試用期間中に履歴書や経歴における重要な詐称が判明した場合、即座に解雇が認められることがあります。
経歴や履歴書は企業が候補者の能力を判断するための重要な情報です。その情報を詐称することは、信頼関係を損なう行為であることはもちろん、企業の損失にもつながります。日本語・英語などの言語能力や資格を偽って入社した場合、期待通りの成果を上げることが難しいであろうことは容易に想像できます。
しかし、詐称の程度が重要でない場合は、解雇が認められないケースもあります。詐称が原因で即座に解雇してしまった場合、詐称の程度によっては不当解雇に該当する可能性があるので注意が必要です。
参考:経歴詐称でいかなる懲戒処分ができるか?|労働問題 .com
能力不足が深刻で、雇用を継続することが難しい場合には、試用期間中であっても解雇が認められることがあります。しかし、能力不足がどの程度かが重要な論点となり、その判断は雇用契約書や就業規則に記載された内容に基づいて行われるのが一般的です。
ただし、この場合でも、従業員に対して適切な指導や改善の機会を提供することが前提となります。もし指導や配置転換が十分に行われていないと判断されれば、不当解雇と見なされる可能性があります。また、業績目標に達していなくても、解雇に値するほどの能力不足と認められないケースもあります。
参考:能力不足を理由に解雇する際の注意点|労働問題 .com

続いて、どのようなケースであれば不当解雇に該当する可能性が高まるのでしょうか。ここでは、不当解雇に該当する可能性の高い4つのケースについて解説します。
新卒入社者や未経験の中途採用者の場合、はじめから高いパフォーマンスが発揮できるわけではありません。勤務態度や出勤状況に問題がないにもかかわらず、短期間で「能力不足」と判断するのは非常に危険です。
配属先を変更したり、追加の研修を行ったりすることでパフォーマンスが向上するというのはよくあるケースです。企業側が十分な支援を行わずに解雇に踏み切ると、不当解雇とみなされる可能性が高くなります。
試用期間中の結果だけで解雇を判断し、取り組みやプロセスを評価しない場合は不当解雇に該当します。
新しい環境に適応するために時間が必要な従業員もいますし、営業など外部要件の影響を受けやすい職種では、短期間で成果を上げることが難しい場合もあります。このような状況を理解しないまま、適切な指導やサポートを提供せずに解雇した場合は無効となる可能性が高いです。
合理的な理由があったとしても、適切な指導やサポートを提供していないと判断される場合も不当解雇に該当します。
たとえ従業員の能力不足が見受けられても、指導やサポートによってパフォーマンスが改善するかもしれません。具体的には、定期的なフィードバックや具体的な目標設定、必要に応じた追加研修や業務内容の見直しを行うことが挙げられます。このような対応がなされない場合、企業側が十分な支援を怠っていると判断され、不当解雇とみなされる可能性が高くなります。
試用期間は、従業員が職場環境や業務内容に順応するための期間であり、企業も従業員の適性を見極める大切な機会です。この期間中に解雇を決定すると、「適応するための期間やサポート期間が十分与えられていない」と見なされ、不当解雇のリスクが高まる可能性があります。
無断欠勤が続く、指導に応じないなどの明確な理由がある場合は試用期間中の解雇が認められるかもしれません。しかし、通常は試用期間が終了するまで従業員に指導を行い、職務に慣れるチャンスを与える必要があります。

試用期間中に従業員を解雇する場合、いくつかの手続きが必要です。具体的には、事前に解雇を予告する解雇予告通知や、解雇理由を明確に記した解雇理由証明書などの作成が挙げられます。これらの手続きを怠ると法的トラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
ここからは、解雇予告通知が必要な条件、解雇予告通知書や解雇理由証明書、そして離職票の内容と作成方法について詳しく解説します。
労働基準法第20条で定められているとおり、試用期間開始から14日を超えて解雇を行う場合、少なくとも30日前に解雇予告が必要です。もしくは、30日分以上の平均賃金を予告手当として支払えば、即時解雇することができます。試用期間開始から14日間の間に解雇する場合は、解雇予告は必要ありません。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
解雇予告は、従業員に対して十分な猶予期間を与えるとともに、トラブルを未然に防ぐ効果があります。
解雇において作成が発生する書類には、解雇予告通知書、解雇理由証明書、離職票があります。なかでも、解雇予告通知書、解雇理由証明書は、解雇について従業員に理解してもらうための重要な書類です。それぞれの書類の性質は以下の通りです。
解雇予告通知書は、前述の解雇通知について書面にまとめたものです。法律上、解雇予告は口頭のみでも問題ありませんが、デリケートな問題だからこそ「言った・聞いていない」問題は避けたいところ。トラブル防止のためにも、書面でも通知することをおすすめします。
具体的には、以下の項目を含めることが一般的です。
解雇理由証明書は、労働者が解雇理由の証明書を請求した場合、企業が作成しなければならない書類です。その名の通り、解雇理由について書面にまとめたものです。労働基準法第22条では、解雇理由証明書について以下のように定められています。
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
厚生労働省が解雇理由証明書のテンプレートを配布しているので、必要に応じてご活用ください。
解雇理由証明書|厚生労働省
※クリックするとダウンロードを開始します。
また、以下の記事も併せてご覧ください。
退職証明書とは?離職票との違いや基本的な作成方法、テンプレート例をご紹介
離職票は「雇用保険被保険者離職票」のことを指し、失業給付金の手続きに必要な書類です。
離職票の発行は必須ではありませんが、退職者が離職票を請求したら企業は手続きを進めなければなりません。離職票を発行するのはハローワークですが、手続きは会社を通じて行われます。手続きが遅れると退職者が失業給付金を受給できなくなるため、迅速に対応する必要があります。
参考:被保険者が離職した場合の事業主が行う手続きはどのようにしたらよいですか。|北海道ハローワーク
試用期間中の解雇について、不当解雇となる理由や注意点をわかりやすく解説しました。試用期間中の解雇について、現場から質問を受けることもあるかと思います。そのような事態において、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
また、「基本的なポイントは理解できたが、自社のケースが不当解雇に該当するかどうか判断できない」という場合は、自己判断せずに弁護士へ相談することをおすすめします。訴訟や賠償請求のリスクが伴う内容ですので、悩んだら専門家に相談しましょう。
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