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採用活動の課題解決①採用の長期化、低受諾率…ある中小企業の事例 【採用賢者に聞く 第7回】

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採用活動の課題解決①採用の長期化、低受諾率…ある中小企業の事例 【採用賢者に聞く 第7回】

学生向けの就活支援をメインに、学生と企業のマッチング事業を行うスカラインターナショナル株式会社。2013年にこの会社を立ち上げた本間友規氏は、スタートアップからミドルベンチャーの採用に関するコンサルティングを手がけながら、6千人を超える学生の就活支援を実施してきたという実績の持ち主です。

学生と企業の間を取り持つ立ち位置から、企業が抱える採用課題の事例を前編と後編に分けて語っていただきました。前編は、長期化する採用活動、低い内定受諾率、幹部採用、という3つの課題を抱えていたWEBマーケティング会社の事例です。

多くの企業が抱える、「長期化」「承諾率」「幹部候補」という採用課題

―まずは、本間様が担当されたクライアントがどのようか会社だったのか、またどのような採用課題を抱えていたのか教えてください。

WEBマーケティングの代理店で、従業員数が150名程度の企業でした。毎年、新卒採用を行っていたのですが、大きく3つの課題を抱えていました。

1.採用活動の長期化
採用活動にかかる期間が1年~1年半ほどに及んでいました。そのため、翌年の採用活動とかぶる期間もあり、現場の社員の工数を圧迫していました。

2.内定を出した学生の低承諾率
内定辞退をする学生の割合が50%を超えていました。採用計画上、「採用人数は20名程度」と決めているので、内定辞退が出ることによって採用活動を長期化させていました。

3.幹部候補となるような新卒採用ができない
(2)の課題とも密接に関わってくるのですが、会社の将来を委ねられるような優秀な人材の採用ができていませんでした。

この企業に限ったことではありませんが、採用の基準を明確化していないために、「とにかく採用人数を集めなくては」と必死になるケースが往々にしてあります。ある程度の採用人数を集めるためには、母数となる募集者数を増やす必要があるので、人事部の負担は増し、工数の長期化など多くの課題が溢れ出すことになるのです。

採用活動で“企業の魅力を伝える”。それこそがブランディングへとつながる

―これらの課題に対して、どのような解決策を行ったのでしょうか。

まずは、この企業の状況や仕事内容をじっくりと観察し、代表と何度かお話しして施策に落とし込んでいきました。話をしてわかったことは、「企業と学生の接点となる入口が少ない」ということです。学生が会社のことをもっと知ることができるような接点を多くつくる必要があると考えました。その一つが、いきなり代表に会ってもらうという施策で、ランチ会などのカジュアルな雰囲気での会合です。一回あたり5名~8名程度の学生と会食を行い、合計で30名ほどの学生と接触する場をつくりました。

―選考の一番はじめに代表との接点があるわけですね。

そうです。採用活動で重要なことは、「その会社の一番の魅力がどこにあるのか」を見つけ出し、その魅力を効果的に学生に伝えることだと考えています。この企業の場合、最大の魅力は代表だと感じました。代表は人間味があふれる兄貴肌的な人で、若い社員たちとも気軽に話をできる、雰囲気作りのうまい人です。この企業はWEBマーケティングを行っているデジタル系の業態なのですが、代表は、人と人とのつながりを大切にする、ある意味アナログ的な方だったので、そのギャップも好感が持てるポイントだと考えました。

なにより代表自身が、「とにかくいい人材を採用したい」と採用活動を重要視していたので、それならばと、代表自身が前面に出ていただく「広告塔」の役割を担っていただきました。代表を前に出すことで、採用活動が持つ「企業ブランディング」という側面を押し出したんです。

また、学生との接触の機会は、短い間隔で設定しました。最初の接触から次の接触まで1か月以上空いてしまうと、学生の記憶も上書きされてしまいますからね。接触頻度を高めた結果、早ければ2週間ほどで内定に至る事例も出てきました。それも採用活動の長期化を防ぐことにつながったと思います。

―会社の魅力を伝えることが採用活動で重要なこと。つまり、それはブランディングにも通じるということですね。

その通りです。新型コロナウィルスの影響で、学生の就職活動は大きく変化しました。新卒採用に関しては、今後も学生の奪い合いが激化していくことは間違いないでしょう。2020年4月からはリモートでの就職活動がメインになり、それにともなって、夏のインターンシップの応募も増加しています。学生にとっても動画だけ見てエントリーするのはハードルが高く、少しでも会社の雰囲気や業務内容を知りたいと考えるのは当然のことでしょう。そうした学生の活動が活発になったからこそ、企業には一層の訴求力が求められるようになりました。最初に接点を持った段階での興味づけ、動機づけが必要で、それをするためには自社の魅力を再確認しなければなりません。その上で、学生との最初の接点において、会社最大の魅力をぶつける必要があります。それは、つまり後々の企業ブランディングにも通じてくる話だと思います。

また、今後の採用活動において「個別化」がキーワードになってくると考えています。通り一遍に内定を出すのではなく、一人ひとりの学生の資質を見極めたうえで、個別に内定を出すようなイメージです。それを実現するためには、企業と学生が近い距離でコミュニケーションをとる必要があります。代表との会食はこのようなところにも貢献できたのではないでしょうか。

従来の採用ルートを活かしつつ、変則的な施策を加えて採用課題を打破する

―会食という施策を行った結果、抱えていた課題はどのように変化していったのでしょうか。

1.採用活動の長期化
代表と学生の会食という入口をつくり、それと同時に代表と何度も話をし、この企業にとっての「優秀な人材」を言語化することに取り組み、成功しました。その後は、従来通りの選考です。そうすることで、代表と人事部の共通認識は深まり、一つひとつの業務のオペレーション化が進み、結果的に10か月ほどで採用活動を終えることができるようになりました。大きな課題でもあった、翌年の採用活動までの余白を生むことができたのです。

2.内定を出した学生の低承諾率
内定の受諾率が低いのは学生が企業を深く知ることができていない、という部分にあると考えています。この企業の場合はそれが顕著でした。そこで代表と学生の会食という接点を作り、気になった学生に対しては「2daysインターンシップ」に参加してもらう、という施策を行いました。学生も企業のことを深く知ることができるようになったため、50%以下だった内定受諾率が70%以上に改善されました。

3.幹部候補となるような新卒採用ができない
先ほども述べた通り、「優秀な人材」の言語化を進めましたが、この企業の場合は幹部候補生として明確に定義づけをしたわけではなく、学生を見る際のポイントを言語化しています。具体的には、「思考力の深さ」「何か新しいことに挑戦した経験があるか」など。最終的に幹部候補としての採用は2名でした。20名の採用枠だったので、採用率としては10%になるので、代表の要望通りの結果となりました。

―この企業の採用支援での最大のポイントはズバリどういったところでしょう。

この企業の場合は、人事部が主導して面談を行うという従来のルートはそのままに、「代表との会食」という別ルートを構築したことで成功した事例だと考えています。優秀な人材を採用しようと思ったら、自社の魅力を伝える場をつくることが有効な場合もありますからね。その結果として、この企業は採用活動の短期化とともに、優秀な人材の確保に成功したと言えます。
採用を長く続けていると、どうしても似たような人材を採用してしまうケースが増えてきます。だからこそ、変則的なルート(施策)を用意することで、自社のブランドを超える人材を採用することも可能になるのです。

優秀な人材を効率的に採用するために

―最初に課題を3つ挙げていただきました。このような課題を生まないために人事担当者が心がけることとはなんでしょうか。

まず人事担当者が自社の決定権者と密なコミュニケーションを取ることです。この企業の場合、決定権者は代表ですが、他の企業にも人事部長や役員など、採用の決定権者が必ずいます。その人物が重要視していることをいかに引き出すか、それが採用の成功を左右する鍵です。

そして、決定権者とコミュニケーションをとる中で、「自社にとっての優秀な人材」を言語化、定義化してください。正直なところ、明確に言語化できている会社はほとんどありません。だからこそ、人事担当者がそこを担わなければならないのです。

―この企業のような課題を抱えている企業というのは多いのでしょうか。

多いと思います。というのも、採用における企業の課題というのは大別すると「1.優秀な人材を・2.効率的に採用したい」という2点です。
(1)に関しては、前述した通り、言語化・定義化したうえで、別ルート(施策)を構築することが大事です。言語化や定義化ができれば、面接時に見るべきポイントが絞られてくるので、結果的に(2)の効率化が進みます。最初はパワーが必要ですが、繰り返し行っていくうちにルーティン化し、結果として、採用活動のオペレーションが固まっていくと思います。

―最後に、人事担当者の方へのメッセージをお願いします。

採用は企業経営そのものです。失敗してしまうと、会社がつぶれてしまうこともあります。また、一回の面接で学生の人生を大きく変えてしまうこともできるくらい責任のある仕事です。だからこそ、自分の採用のやり方を常に疑い、見直してください。

多くの人事担当者は数字や設計の部分に目を奪われがちですが、それを使いこなせるノウハウは当社のようなベンダーが持っています。そういった会社をうまく利用しながら、自社の将来を委ねられる人材を獲得するためになるべく多くの時間を使って欲しいと考えています。

後編:採用活動の課題解決②初めての新卒採用…ゼロから成果を上げた実例【採用賢者に聞く 第8回】

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この記事の著者
本間 友規
本間 友規

スカラインターナショナル株式会社
代表
http://www.scalaintl.jp/

2007年名古屋大学理学部卒業後、株式会社リクルートにてキャリア領域の広告営業および事業開発に携わる。2011年株式会社Speeeにジョインし、Webマーケティングのコンサルティングセールスに従事。その後「人と組織の可能性の最大化」を目指す株式会社人材研究所にて新卒事業部責任者を経て2013年に創業。主にスタートアップからミドルベンチャーの組織人事・採用領域のコンサルティングを提供しながら、学生向けの就活支援を8,000人以上実施。

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