お役立ち記事

こんにちは。採用管理システムsonar ATSを提供するsonar ATS編集部です。
この記事は、「採用ペルソナについて理解を深めたい」「採用ペルソナの設計手順について知りたい」という採用ご担当者様におすすめの内容です。
採用ペルソナとは、「自社にとって理想的な候補者像」のことです。本記事では、採用ペルソナの作り方について詳しく解説します。また、採用ペルソナと採用ターゲットの違いに加え、ITベンチャー企業のK社の事例についても紹介します。

目次
採用ペルソナの作り方について解説する前に、まずは「採用ペルソナとは何か」についての理解を深めましょう。ここでは、採用ペルソナの定義や採用ターゲットとの違い、採用ペルソナの重要性について解説します。
「ペルソナ(persona)」とは、特定のターゲットの特徴や行動を具体化した「理想的な人物像」を指します。もともとはラテン語で「仮面」や「役割」を意味し、現代では特にマーケティングの分野で広く使われています。
「採用ペルソナ」とは、企業が求める「理想的な候補者像」を具体的に表したものです。スキルや経験、価値観、行動パターン、年齢、学歴、職歴などを、一人の人物像に落とし込んで作成します。
採用ペルソナを設計することで、採用活動の方向性が明確になり、より効果的なアプローチが可能になります。また、チーム内で求める人材像の共通認識を持つためにも役立ちます。

よく混同されがちな「採用ペルソナ」と「採用ターゲット」ですが、それぞれには明確な違いがあります。
採用ターゲットとは、年齢、性別、職歴などの属性に基づいて絞り込んだ、大まかな人材像を指します。一方、採用ペルソナは、これらをさらに具体化し、1人の個人としての特徴まで詳細に落とし込んだものです。採用ターゲットが「層」を指し、採用ペルソナは「1人の個人」を指すと考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、採用ターゲットが「20代の営業職」の場合、採用ペルソナは「20歳女性、都内で一人暮らし。IT業界での営業経験が3年以上あり。年収500万円で、スキルアップへの意欲が高い」となります。
厚生労働省の調査によると、新卒で就職した大学卒業者の約35%が、3年以内に離職していることがわかっています。この早期離職の背景には、採用時のミスマッチが大きく影響していると考えられます。
そこで重要となるのが「採用ペルソナ」です。「理想の候補者像」である採用ペルソナが曖昧なままだと、自社に最適な人材を採用しにくくなり、結果として早期離職の原因にもなってしまいます。
一方で、適切なペルソナを設定できれば、企業と求職者の間で生じる認識のズレを最小限に抑え、早期離職のリスクを低減できます。こうした理由から、新卒採用を成功させるためには、採用ペルソナを明確にすることが欠かせません。
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します |厚生労働省


では、採用ペルソナは何のために作成するのでしょうか?ここでは、採用ペルソナの3つのメリットを紹介します。
社内の採用に関与する全メンバーが「理想の候補者像」を共有することで、同じ目標や認識に基づいて採用活動を進めることができます。社内の認識がずれていると、採用活動中に議論が発生し、場合によってはトラブルに発展したりする可能性があります。
詳細な採用ペルソナを設計することで、経営層、事業部、採用チームの間で認識を合わせることができ、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
面接官にとっても採用ペルソナの活用にはメリットがあります。候補者を評価する際の判断基準が統一されるため、評価のばらつきを防ぎ、公平性を保つことができます。
採用ペルソナはスキルや成果だけでなく、「そのスキルを身につけた理由」や「成果を上げた過程」といった価値観にも踏み込みます。そのため、面接官は表面的なスキルや成果に惑わされることなく、価値観も視野に入れて自社が求める人材を見極めることができます。
採用ペルソナに基づき、企業の価値観や文化に合った候補者を採用することができれば、ミスマッチが起こる確率は自ずと小さくなります。結果として、人材定着率も向上するでしょう。
また、価値観の一致した社員同士が集まることで、職場のコミュニケーションが活発化するという効果も期待できます。このように、採用ペルソナは長期的な職場環境の改善にも寄与します。

続いて、採用ペルソナの作り方について解説します。一般的には、以下の手順に沿って設計することがおすすめです。
まずは、求める人物像について情報収集を行いましょう。
求める人物像は、企業の経営方針や成長目標から逆算して考えます。経営者や役員にヒアリングしてもよいでしょう。現在活躍している社員に対して、仕事に対する考え方や入社理由をインタビューすることもおすすめです。
併せて、客観的なデータも参考にしましょう。活躍している複数社員の実績や行動パターン、適性検査結果などのデータを分析し、共通点を洗い出します。
ここで注意したいのは、主観的な意見と客観的なデータが必ずしも一致するとは限らない点です。例えば、活躍している社員へのインタビューでは「素直な人が結果を出せる」と言っているにも関わらず、本人の適性検査結果では「従順性が低い」という矛盾した結果が出ることもあります。
主観的な意見にはバイアスが含まれており、一方で客観的なデータでは仕事にかける想いのような定性的な要素は測れません。主観と客観、両方の視点を補完し合って要素を洗い出すことが大切です。
経営者へのヒアリング内容や活躍する社員に共通する要素を、スキルや経験、価値観ごとに整理します。その際、「必須要件」と「あると望ましい要件」に分けると、その後の設計がスムーズになります。
また、主観的な意見と客観的なデータが一致しない場合は、その背景に立ち返って考えましょう。たとえば、「活躍するには素直さが重要」との意見と「従順性が低い人が活躍している」というデータがあるとします。
この場合の「素直さ」は、指示にただ従うのではなく、自分なりに考え行動する積極性や柔軟性について言及している可能性が高いです。
続いて、整理した要件をもとに採用ペルソナを具体化します。
採用ペルソナは「一人の具体的な人物」を想定して作成するのがポイントです。整理した要件をもとに、スキルや経験、価値観などの項目を埋めていきます。また、年齢や学歴、職歴などの基本的な属性も設定します。
採用ペルソナを考える際は、ストーリーを持たせることでイメージしやすくなります。たとえば、「30歳、都心在住、5年間IT業界でプロジェクトマネージャーを経験。リーダーシップを発揮し、新製品の開発を担当した経験あり。新しい技術を学ぶ意欲が強く、キャリアアップに積極的。」という内容です。
このように詳細まで作りこむことで、採用フローのあらゆる場面で活躍する実践的なペルソナを設計できます。また、採用ペルソナを具体化する際にはテンプレートやペルソナシートを活用すると良いでしょう。以下にペルソナ作成に役立つテンプレートを配布しますので、ぜひご参考にしてください。
テンプレートのダウンロードはこちら(※クリックするとダウンロードを開始します)
↓テンプレートのイメージ画像

採用ペルソナが完成したら、経営層や面接を担当する部署に共有します。この際のポイントは、フィードバックがあってもなるべく修正を加えないことです。
役員や各部署に共有すると、さまざまなフィードバックを受けることがあるでしょう。しかし、それらをすべて取り入れていると、いつまでも完成しないばかりか、当初の要件から逸れてしまう可能性もあります。
採用ペルソナは、採用チームが責任をもって作成し、必要に応じて調整を加える程度にとどめましょう。そして、要件だけでなく、作成の背景や意図も丁寧に説明することで、経営層や各部署に納得してもらうことが大切です。
採用ペルソナは一度作って終わりではありません。毎月や四半期ごとに応募データや面接評価を振り返り、ターゲット層の変化や社内ニーズを見極めることが大切です。
たとえば、リモートワークの普及により働き方が変化すると、必要とされる資質や条件も変化します。それらを再確認し、採用ペルソナに反映することで、精度の高い採用活動を続けることができます
見直しの時期をスケジュール化すれば、担当者全員の認識をそろえやすく、更新の抜け漏れも防ぎやすいでしょう。

続いて、採用ペルソナの実際の設計事例を見ていきましょう。ITベンチャー企業のK社の設計事例について、K社の採用担当者にインタビューした内容をまとめました。K社の従業員は約200名で、新卒採用で活用する採用ペルソナを設計しています。
K社が採用ペルソナを設計する最大の目的は、「採用チームと経営層の認識を一致させること」です。
過去の採用活動では、理想の候補者像に対する採用チームと経営層の認識が一致せず、採用活動が思うように進まないケースがあったそうです。この反省を踏まえ、現在は認識の齟齬が生まれる余地がないくらい細かく採用ペルソナを作り込んでいます。
さらに、面接官との認識をそろえることも重要な目的の一つです。面接や面談には採用担当や経営層だけでなく、各部署の社員も参加します。普段採用に関わらない社員にも、理想の候補者像を正確に伝えることで、ミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
次に、K社が実際に行っている採用ペルソナの設計手順を紹介します。
K社が掲げるバリューをもとに、評価内容や選考基準を決定します。それらに基づいて、候補者の行動特性や必要な経験を箇条書きで整理します。
人材要件がまとまったら、「理想の候補者はどのような属性か」「どのような経験が現在の価値観に結びついているのか」を深掘りします。これを基に、「幼少期の過ごし方」「中高生のエピソード」「大学生のエピソード」といったストーリーを作成します。
作成したストーリーを箇条書きでまとめ直します。この際、当初の人材要件とズレがないかを確認し、必要に応じて修正します。
最後に、「この人物はどのような就職活動をするか」を考えます。具体的には、就職活動の軸、選考でのエピソード、自社への応募理由をまとめます。
以上が、K社が実際に行っている採用ペルソナの設計手順です。
幼少期や中学・高校時代のストーリーを考えるのが難しい場合もあるでしょう。その際のコツとして、まず大学時代のエピソードから考え始めると良いでしょう。大学時代のエピソードは、幼少期よりもイメージしやすいという特徴があるからです。
まずは、「理想の候補者はどのような大学生活を送っているか」をイメージします。その後、「その大学生はどのような中学・高校生活を送ったのか」「どのような幼少期を過ごしたのか」を逆算して考えます。さらに、「そのような幼少期を過ごした背景には、どのような家族構成や両親の特徴があるか」を深掘りします。
この順序で考えることで、スムーズにストーリーを作成できます。

採用ペルソナを作成しても、それらを有効に活用しなければ意味がありません。ここでは、採用ペルソナの具体的な活用方法を解説します。
採用ペルソナをもとにすることで、求める人材像に適した採用チャネルを効果的に選択できます。
たとえば、採用ペルソナが「プログラミング経験が5年以上で、チームリーダー経験が2年以上。向上心がある20代のエンジニア」であるとしましょう。この場合、ITエンジニア向けの専門求人媒体やエージェントを利用することで、より適性の高い候補者にアプローチできます。
また、技術向上に積極的なエンジニアは、SNSやブログで情報発信を行っているケースが多く見られます。そのため、TwitterやLinkedInなどのSNSやブログ情報を活用することで、ターゲット人材を見つけることができるかもしれません。
さらに、過去の採用データをもとに、どのチャネルがペルソナに近い応募者を多く集めているかを分析し、成果が出ていないチャネルは見直すことが重要です。
このように、採用ペルソナを基に採用チャネルを戦略的に選定することで、より効率的かつ確実に求める人材を獲得することが可能になります。
採用ペルソナをもとに求人票やスカウトメッセージを作成すると、候補者に響く文章を作成することができます。
たとえば、向上心のある人材をペルソナに設定するのであれば「最新ツールを活用したプロジェクトへの参画」を強調します。リモートワークを希望する人物であれば「柔軟な働き方を推奨する社内文化」をアピールするとよいでしょう。
表現が抽象的だと魅力が伝わりづらくなるため、なるべく具体的なキーワードや事例を盛り込むことがポイントです。そのうえで、採用ペルソナの疑問や期待に応える文面の作成を心掛けましょう。
採用ペルソナが明確であれば、面接や評価の基準も作りやすくなります。
たとえば、「リーダーシップと論理的思考力を兼ね備えた人材」というペルソナを設定した場合、行動履歴からその能力を具体的に測る質問を用意することができます。行動について深掘りするSTAR面接(Situation、Task、Action、Result)を取り入れれば、候補者の過去の行動プロセスや成果を引き出しやすく、ペルソナにマッチする実績やスキルをより正確に把握できます。
評価項目もペルソナから逆算して設定し、面接官全員で事前に共有することで、公平な評価を行いやすくなるでしょう。複数回の面接で複数の面接官が評価する場合も、ペルソナを指針とすることで一貫性を保てる点も大きなメリットです。


採用活動全体の質を高めるうえで重要な採用ペルソナですが、設計する際にはいくつか注意点があります。「せっかく設計したのに、思うように活用できなかった」という事態は避けたいもの。ここからは、採用ペルソナを設計する際に注意すべき3つのポイントについて解説します。
採用ペルソナを設計する際に、担当者の経験や感覚だけを頼りに作り上げてしまうと、実際の求める人材像と大きくかけ離れるリスクがあります。
「前職で優秀だった部下に似たタイプが欲しい」「話が合うタイプが良い」といった主観的な判断は、組織が求める人物像と客観的データが整合しない場合が多いです。
特に候補者の年代や経歴、スキルなどは、市場の動向や現場の声を反映する必要があります。ペルソナが現場の意向やデータとリンクしていなければ、せっかく作成しても的外れになりかねません。
複数の関係者との意見交換や、客観的な数値データの収集を通じて、主観に偏らない設計を目指しましょう。
組織の多様性を確保するために、複数の採用ペルソナを作成することが大切です。
新卒採用では、主体的にプロジェクトを推進できるリーダータイプと、緻密な作業やデータ分析が得意なサポートタイプの人材が必要になるかもしれません。リーダータイプのペルソナでは「学生時代の課外活動やリーダー経験」を重視し、サポートタイプでは「研究やアルバイトでの正確性や継続力」を重視するとよいでしょう。
さらに、能力の程度に応じて複数のペルソナを設計するのもおすすめです。要件(テーマ)に沿うことを前提に、スキルや過去の経験をもとに段階的にペルソナを作成します。
例えば、同じリーダータイプでも、「Aランクは複数のリーダー経験があり、それぞれの組織で成果を上げた人材」「Bランクはリーダー経験はあるものの、大きな成果には至らなかった人材」といった形で段階を分けます。
このように設計することで、さまざまなタイプの候補者を適切に評価できるようになります。
採用ペルソナを作る際に要件を厳密に決めすぎると、現実的には存在しない「完璧な」候補者像が出来上がってしまいます。
たとえば「英語が堪能で、マネジメント経験5年以上、リモートワークにも即応できる30代前半の技術職」など、高度な条件を含めすぎると該当する人材が極端に少なくなるでしょう。
また、新規事業や市場変化などで組織が必要とするスキルや経験が変わった場合、条件を細かくしすぎているとペルソナのアップデートに手間がかかり、採用活動の柔軟性を失う恐れもあります。
採用ペルソナを作成する際は、実際の応募者や人材市場の動向を見ながら調整できる余地を残すことが重要です。

最後に、採用ペルソナについてよくある質問とその回答を紹介します。採用ペルソナについてより理解を深めたいご担当者様は、ぜひご参考にしてください。
採用ペルソナは、新卒・中途を問わず、求める人物像を整理するうえで大いに役立ちます。
新卒採用では、学生が重視する働き方や社風、成長機会などに注目してペルソナを作成すると、学生に響くPRポイントを見つけやすくなります。一方、中途採用では、即戦力として求める業務経験や専門スキル、組織との相性を考慮したペルソナを設定することで、よりターゲットに合ったメッセージを打ち出せます。
採用ペルソナは、一貫した採用活動を行うために欠かせないものです。作成に時間や工数はかかりますが、新卒採用・中途採用の両方で作成することをおすすめします。
採用ペルソナの活用を検討する際は、デザイン思考の代表的なツールである「エンパシーマップ(Empathy Map)」が役立ちます。エンパシーマップ(Empathy Map)とは、「相手(ここでは候補者やペルソナ)の思考や感情を可視化する」ためのフレームワークです。以下は、若手ITエンジニアのエンパシーマップの例です。

エンパシーマップを活用するためには、採用ペルソナが「見ているもの」「聞いていること」「言っていること」「考えていること」「感じていること」「行動していること」を整理します。
これにより、採用ペルソナがどんな情報に接触し、何を求め、何に不安を抱いているのかが具体化されます。そこから、自社の魅力や求人情報をどう伝えるべきか、どんなメッセージが有効かを検討することで、より採用ペルソナに響くメッセージを打ち出すことができます。
ペルソナは一度作ったら終わりではなく、組織や市場の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。
たとえば、年度の切り替わりや組織改編、新規事業の開始など、大きな方針転換があったタイミングで見直すと良いでしょう。また、応募者の傾向や内定辞退の理由、面接時の評価データなどを定期的に分析し、見直しに活用するのも有効です。
半年や四半期といったタイミングで簡単なチェックを行うことで、常に効果的な採用ペルソナを維持できます。
採用ペルソナの設計は簡単ではありません。しかし、採用ペルソナをもとに求人票の作成やスカウトメールの作成、選考プロセスの見直しを行うことで、採用活動全体の質を高めることができます。ミスマッチを防ぐこともできるので、企業はもちろん候補者にとってもメリットがあります。
「求める人材がなかなか採用できない」「採用活動全体の質を高めたい」とお考えのご担当者様は、ぜひ採用ペルソナを設計してみてはいかがでしょうか。本記事の内容が、そのようなご担当者様にとって少しでもお役に立てば幸いです。
2,300社以上にご導入された採用管理システム sonar ATSを展開。このお役立ち記事では、採用セミナーレポートやお役立ちコンテンツをはじめ、企業の採用担当者の皆さまに採用に役立つ有益な情報をお届けしています。