お役立ち記事

人事業務をテクノロジーでサポートするHRテック。幅広いサービスがあるなか、採用に特化したソリューションを「採用テック」と呼んでいます。アメリカのように仕事単位で契約するスタイルとは異なり、一度採用したら会社側の勝手な都合で解雇することができない日本企業の場合、採用活動は慎重になりがちです。その上、労働人口は減る一方で、よりよい人材を求めた結果、接点の持ち方や選考プロセスは複雑かつ多様になってしまいました。このような現状において、採用テックは採用活動にどのように寄与するのでしょうか。前編では、「HRテック」の全体像について解説してくださった、株式会社KAKEAIの代表取締役社長 兼 CEOである本田英貴氏に、「採用テック」について解説していただこうと思います。
前編:HRテックとは何か?①HRテックの全体像【識者に聞く 第1回】

――採用テックの定義について教えてください。
「HRテック」領域の一つで、人事業務の中の「採用」に特化したソリューションを、便宜上このように呼んでいます。従来は、「母集団形成から入社までの選考プロセスをサポートするもの」という位置づけでした。しかし、労働人口が減り、人材の流動性が高まるなか、採用後も会社に残ってもらうことも、採用活動の大きなテーマになってきています。そのため、入社してから定着するまでのフォローやサポート、いわゆるオンボーディングが必要となりました。前編で説明したエンプロイーエクスペリエンスに関わることで、人事業務のなかの「採用」と「その他」の領域との垣根は低くなり、シームレスになりつつあると感じています。
また、採用活動の目的は、新しい人材を確保することだけではありません。近年は、退職したOB・OGのネットワークも、人材を確保するためのリソースとして重要視されています。そのネットワークを支援するためのテクノロジーも、採用テックの領域なのです。
採用の手段やプロセスは多様化しています。電話、メール、SNSとさまざまな接点の持ち方があるほか、新卒採用の場合は、採用の前段階からコミュニケーションをとるインターンシップもあります。それらを支援するツールやシステムも、採用テックの領域に含まれるので、手段やプロセスが多様化すればするほど、その領域はさらに広がっていくでしょう。
一方で、採用活動は業務が煩雑で工数も多いため、一度の採用に紐づくコストパフォーマンスを上げるために、「質」も重視されるようになってきました。要するに、企業側と求職者の双方にとって失敗がない採用が求められているということです。その課題をテクノロジーで解消するのも、採用テックの役目です。たとえば、自社で活躍している人材の適性検査データなどを分析し、採用基準を設けて、AIでマッチングするという試みも採用活動の質を高めるソリューションの一例です。

――採用テックのサービスやシステムにはどのような種類があるのでしょうか。
採用テックのサービスやシステムには主に3つの種類があると考えています。それぞれ分けて解説します。
| ●母集団の形成 新卒採用がイメージしやすいと思いますが、応募者として管理する前の人材にリーチするサービスです。「自社を知ってもらう」ためのテクノロジーとも言えるでしょう。さまざまなプラットフォームがあるので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。なかには、「会社のことを知ってもらう」ところから選考のプロセスを管理し、採用に至るまで一気通貫で対応できるサービスもあります。 ●選考プロセスの効率化 応募者との面接・面談の日程を調整、さらにコミュニケーションの履歴、選考状況などを把握するためのシステムで、選考プロセスの管理を効率化するのが目的です。応募者にとっては、人事からのリアクション=「企業の印象」に直結しています。採用テックで、スピーディに対応できれば、応募者の心象もそのぶんよくなるので、人材をしっかりグリップでき、チャンスを広げることができるでしょう。選考プロセスの管理は、効率化していただきたい業務の一つと考えます。 選考プロセスにおいては、AIで応募者と企業のマッチングを図れるサービスやシステムもあります。オンライン面接が増えて、応募者との接点が希薄になっている現在、得られる情報量は格段に減り、それが選考にも影響を及ぼしています。そこで、効率よく応募者のことを理解するためにも、「AIを導入して採用活動の質を担保したい」という企業ニーズも高まっています。 ●活躍への接続 採用テックが導入される以前は、「選考プロセスで応募者の理解を深めることができても、現場にその情報を伝えられない」という課題がありました。共有できたとしても、せいぜいSPIの結果と面接時のメモを、配属先の上司に渡す程度。そのため、いざ入社しても新入社員が本来の能力や魅力を発揮できずに、最悪の場合は離職してしまうというケースもありました。 |
採用テックによるソリューションを活用すれば、選考プロセスで得た新入社員の情報を、現場の上司に共有することができ、仕事のアサインや育成目標の作成にも役立てることができます。また、オンボーディングのためのフォローも、採用テックで質を高められるでしょう。
なお、テクノロジーの導入前に重要なのは、従業員に何らかの情報を入力してもらうのは「サポートのため」という説明を丁寧にすることです。「評価につながるのでは?」「心象が悪くなるのでは?」といった従業員の不安や疑念をしっかり解消してあげなければ、テクノロジーは十全に機能しません。このような説明の機会は非常に重要です。必ず十分な時間を割いて行うようにしてください。

――実際に、採用テック導入によって、どのような成果が出ているのでしょうか。
確実に言えるのは、採用活動が今までよりも効率化されるということです。スケジュール管理のミスや資料の抜け漏れといった単純なヒューマンエラーも排除できるようになります。
また、採用担当者の力量が高くなくても、テクノロジーである程度カバーできるようにもなります。極端に言えば、中小企業から大企業まで、どんな企業規模であっても同等に質の高い採用活動ができるようになる、ということです。たとえば、「現在社内で活躍している人材から人材要件を抽出して、選考基準に生かす」「応募者の能力を客観的にチェックする」など、採用活動の質を高めるさまざまなサービスが活用できるのも、採用テックの大きな特徴です。
これは、地方の企業にとっては有利なサービスです。これまで地方の企業は、地域外から採用するにはU・Iターン希望者しか選択肢を持てませんでしたが、リモートワークが普及したことで、地域を問わずに人材を募ることができる状況になりました。このような状況下において、高いレベルの採用活動をするチャンスがあるときに大きな意味があると思います。

――採用テックの導入を検討している採用担当者に、メリットと注意点を改めて教えてください。
採用活動は多岐にわたる業務内容と多くの工数がかかるため、採用テックの活用による効率化は、非常に有意義です。また、客観的なデータによる採用活動のバックチェックも採用テックなら実現可能になります。たとえば、よい人材が採れていない原因は、「そもそも母集団形成できていないから」もしくは、「選考プロセスでの見極めに問題があるから」など、課題の発見と解消に役立てることができるのです。このように、採用活動にかかる業務の軽減と質の向上に採用テックが貢献できるのは大きなメリットだと思います。
一方で注意すべき点は、採用テックのツールを使うことが目的化してしまうことです。もちろん、ツールのマニュアルに則り、そのとおりに取り組めば業務は改善するでしょう。しかし、ツールというのは「なんのために使うのか」という明確な目的がなければ十分な役割を果たしません。だからこそ、採用テックを導入しようと検討している人事担当者は、解決したい課題を明確にしておくことをおすすめします。
――今後、採用テックはどのように進化していくとお考えですか。
副業・兼業が当たり前というワークスタイルが定着していくため、今後、定年まで一つの企業に勤める人は減少していきます。従業員にとっても、これまでのように会社に身を委ねるスタイルではなく、自身で仕事を選択して、キャリアを積み上げていかなくてはならなくなるでしょう。このような人材を会社に確保しておくためにも、「採用テック」もHRテック全般と同様に個人視点を重視したプロダクトに変化していくのではないでしょうか。具体的には、「当社ではこのような仕事ができる」「当社の仕事がこのようなキャリアとして活かせる」「こういう力がつくので、将来にこう活きる」という、働く人のニーズに応える採用テックが求められると思います。
また、採用活動自体も、人事が一括して取りまとめる形式から、現場組織が副業・兼業を含めて社内外から人材を募るという形へ変化すると考えられます。それにともなって、管理者に求められる資質も、「有力な人材のネットワークを持っているか」ということにシフトチェンジしていくでしょう。そして、企業に雇用されるという概念が徐々になくなるため、“従業員”という呼び方も“パートナー”という表現に変わっていくのではないでしょうか。企業への所属意識がなくなったなかで、企業と働く人が対等な関係を築き、よい仕事に取り組む、そのような世界がやってくるように思います。

――最後に、採用活動の業務がテクノロジーに置き換わる一方で、採用担当者が取り組むべきことはなんでしょうか。
どれだけテクノロジーが進化しても、最終的に人を動機づけられるのは、人でしかないと思います。たとえば、オンライン面談では拭い去れなかった不安が、リアルで会うことで解消できた、という話はよく聞きます。テクノロジーは情報を伝えることはできますが、働く上で気になる会社の雰囲気やどんな社員がいるのかといった感覚的なものは、実際に関係者が応募者と対面しないことには伝え切ることはできないでしょう。脳に響くようなことは、人にしかできません。その意識を忘れないことが採用担当者にとって大切なことだと思います。
2,300社以上にご導入された採用管理システム sonar ATSを展開。このお役立ち記事では、採用セミナーレポートやお役立ちコンテンツをはじめ、企業の採用担当者の皆さまに採用に役立つ有益な情報をお届けしています。