理系学生を採用したい企業様の多くが、理系採用ならではのお悩みをお持ちのことでしょう。しかし、データベース化された情報を持っている専門家はなかなか多くありません。
2020年12月17日に、旧帝大・地方大学の理系学生の4人に1人が登録する理系採用サービス「LabBase」を運用する株式会社POLと、理系企業様を含め多数の企業様に支持される採用管理システム「SONAR ATS」を販売するイグナイトアイ株式会社(現・Thinkings株式会社)の共催で、セミナーを開催いたしました。本セミナーでの内容を、レポートにしてお届けします。
後編ではパネルディスカッションや皆様からの質疑応答をご紹介します。
登壇者紹介
森田 徹
イグナイトアイ株式会社(現・Thinkings株式会社) 取締役
2006年に北海道大学経済学部を卒業。在学中はアカウンティングを専攻。2006年に人材コンサルティング会社へ入社。大手企業からベンチャー企業まで数多くの新卒・中途採用の成功スキーム構築の実績を残す。 営業リーダー、アライアンス、サービス開発担当を務め、新規事業としてSONARの開発に初期から携わる。2013年、イグナイトアイ株式会社の創業メンバーとして参画し、執行役員に就任。サービス企画を管掌。
森田:
ここからはパネルトークとして、テーマに沿ってお話をさせていただければと思います。これから22卒が本格化していきますが、まずは「22卒でこれからやったほうがいいこと」についてです。山永さんお願いします。
山永氏:
はい、先ほどお見せしたデータにもあったように学生の動き出しが早くなっている一方で、(2020年11月時点では)まだまだ業種、業界を絞り切れていない印象があります。今学生のお話を直接うかがってみますと、第一志望群まではなんとなく決めてはいるものの、まだ第二志望や、第二志望群に入る企業様がどこなのか決まっておらず、まだ余地はあるかなと思っています。いま言えることは22卒でも早期化は進んでいるものの(自社が志望企業に入る)可能性はあるということかと思います。森田さんいかがでしょうか?
森田:
そうですね。学生さんに聞くと、学生の挙げる志望企業様はどこもいい会社だな、と思います。頭一つどこかの企業様が抜けているというよりは、業界絞り切れていないという話もあったと思いますが、私もそう思います。やはりそこで今の時期であればインターンシップやリクルーターや面談などの機会もあると思うので、志望先がまだ決まっていないという前提で、幅広く学生さんに向き合っていただきたいと思います。学生側もそういった機会を経験すると、志望度が頭一つ抜けた状態で選考のフェーズに進んでいけるのではないかと考えます。
山永氏:
そうですね。ただ、コロナの影響で夏のインターンシップ等も絞られているなど、学生さんとしては一社に絞り切りづらい環境だと思っています。学生さんも「オンラインで受けるのはどうなのだろう」と不安を抱えながら、たくさん受けるよりインターンに通ってよかったところを受けていく、そのインターン経由で知った人以外はなかなか会わない、ということが多いようです。
一方、インターンをオンラインで開催するとその前後のつながりがなかなかもてないようです。今まではインターン先で連絡先を交換して、仲が深まり、そのあと一か月後に友達と一緒に飲みに行き、情報交換をしながら今の就職活動について語らう、ということもあったと思うのですが、そういったものは減少している認識がありますね。
森田:
そうですね、ネットを探せばいくらでも情報はありますが、リアルの情報に飢えているというか、相談できる相手がいないというのが、学生さんの悩みや不安になっているのではないかと思っています。
森田:
逆に22卒採用でこういうのは気を付けたほうがいい、ということはありますか?
山永氏:
例えば今、オンラインでのインターンシップで学生さんがどういうことを求めているか、どういうことをやればいいのか、悩まれている企業様もいらっしゃると思いますが、そこに考える時間の工数を掛けすぎるのもあまりよくないかなと思っています。オンラインだからこういうのがいいよね、というのはあまり学生としては意識をしていないというか。結局「現場の方と話したい」「職場の仕事内容がわかる」といったことが「やりたいこと」でして、オフラインと求めていることは大きく変わらないという印象ですね。オンラインだとこういうことに気を付けないといけないのではないか、等に時間を割いてしまうより、企画をしてすぐに実施したほうがよいかと思いました。
森田:
そうですね。オンラインを意識しすぎると、現場に入れないとか、環境の問題などありますが、いかに実施するかというのが大事かと思います。学生さんもオンラインの授業で当たり前のようになれてらっしゃるので、そこまで意識しすぎることはないかなと思いますね。
山永氏:
おっしゃる通りですね。さきほどオンラインネイティブという言葉を使いましたが、学生にとっては当たり前の環境になってきているので、運営面で学生が嫌がるのではないか、オンラインに抵抗があるのではないか、等についてはあまり心配しなくていいかなと思います。
森田:
ありがとうございます。むしろ先ほどの学生のアンケート結果にもあった、学業と就活の両立の不安、研究が思うように進んでいる・いない、など学生さんの状況を踏まえて、企業側が選考や面接を配慮したほうがいいかなと思いますね。
山永氏:
そうですね。まず、スケジュール感では、修士の学生さんは1月末から2月にかけては研究の発表がある学生さんが多く、2月の末になると発表が重なってくるようです。1月2月は学生さんとしては忙しい、特に学生さんによって「この週が忙しい」などピンポイントであります。研究室によりますが、大体1月の中旬くらいまでは暇をしている学生さんが多く、3週目、4週目くらいが中間発表で忙しくなり、2月暇になったと思ったらテスト期間や発表で2月の末に忙しくなり、3月になると余裕はでてくる、そんなスケジュール感でみていただければと思います。
森田:
スケジュールも、選考の早期化は早まるところまで早まったかなと思います。おっしゃっていただいた通り学生も学業のスケジュールがあるので、早いからいい、というのもなくなってきたのかなと思いますね。
山永氏:
そうですね。やはり自社のベンチマーク企業様をどこと置くのか、競合にいく学生さんをとりにいきたい、だからこそこのタイミングで選考をしないといけないだとか、経営陣(候補)・トップ層は早く取りに行って通常選考枠と他など工夫をして区分けをして、選考フローを考えるのはすごく重要だと思います。
森田:
今は22卒の話ですが、この先の未来「23卒以降に向けて考えておくこと、今のうちに取り組んでおいてよいこと」はありますか?
山永氏:
そうですね、5月6月くらいから学生さんが動き始めることを考えると、その時期までに年間のマイルストーンの設計を考えておきたいですね。3月4月くらいには設計が終わることを考えると、12月1月くらいから予算感を考え、どのように採用にパワーをとっていくのかを議論をしないといけないと思います。僕が担当させていただいている大手企業の担当者様は、23卒の準備を年が明けたくらいからされていらっしゃいます。学生の早期化にあわせて企業様の動きも早期化していると思いますが、22卒が同時並行でして。僕も前職で採用担当をしていたので3学年くらいが同時並行で進んでいく難しさはありつつも、そこをどこまで早められるかというのは非常に大事なところですね。
森田:
ちなみに『LabBase』は次の学年への登録など、年度の区切りとかは常にされているのでしょうか。
山永氏:
基本的には常にオープンにしています。どの学年でもいつでも入れるように、特に制限はかけていません。幅広く展開しておりまして、例えば学部の学生さんにESの書き方や『LabBase』のプロフィールをどう充実させるのか、添削をするような講座を展開しナーチャリングしています。なかなか同時並行でやっていくのは難しいところもありますが、システム設計上複雑になりうるものなのかなと思います。
森田:
そうですね、やはりターゲットが多様化していると思うので、入ってきたときにターゲットがわかるようにしておく。マジョリティの学生さんがたくさんいるのは当たり前ですが、希少価値の高い、出現率の低い学生さんも入ってきているのにキャッチアップができないともったいないですよね。それをキャッチアップできるよう、入ってきた瞬間にアラートが飛ぶような設計にしておく、なども大事だと思います。
私もこの前とあるメーカーさんと話をしていて説明会がなくなったり、開催してもオンラインだと学生の集まりが悪かったり、オフラインだと説明会で偶然の出会いがありそこで知りあった学生さんといい話ができた、オンラインだとそのような出会いが少ないとおっしゃっていました。インターンやイベントなど、自社のコンテンツを作り、そこに受け入れをしていくことを強化していくことが今後の採用の中で大事だな、と思います。そういった設計を企画していくなどが今後重要で、情報だけではなく自分から発信していく準備をしていけると先々よいかと考えています。
山永氏:
そうですね、やはりATSなどを導入していくポジティブな企業様は、一人ひとりのバイネーム管理などエクセルで管理していてごちゃごちゃしてしまっていたものがなくなっていって、さらに高次元のブランディングをどうしていこう、どういう打ち出しをしていこう、とことに時間を使えるようになるというのは大きなメリットだなと思います。
森田:
SONAR ATSと他社ATSさんとの違いは、新卒も中途も両方使えることはもちろんそうなのですが、採用媒体・メディアに連動したATSと比較をすると、採用を年度で切り分けていない点が大きなが違いです。1年生や2年生の低学年から、スケジュールなどにとらわれず、自社の自由な採用などに非常に対応がしやすくなっています。ATS内で採用のフローチャートを自由に作ることができるので、そういった多様な採用をやっている企業様には非常に好評をいただいておりまして、技術系の理系学生さんを採用される企業様は得意です。いろいろなお話をできたらと思います。導入前ももちろん利用は可能ですのでご相談いただければと思います。
山永:
理系の院生というところに特化しますと、一番よいチャネルはOG・OBです。大学群、研究者、研究室、領域の研究をしている学生をとりたいのであれば、最も強い口コミだと思います。「推薦やOG・OBの口コミがほとんどです」とはおつたえしているのですが、一方で公開されたデータベースのほうが良いケースもあります。今までピンポイントで全くリーチできなかったところにまず1事例つくりにいくことを、私はお勧めしています。例えば、AIの研究室にアプローチをかけたいけれど内定実績もないし採用したとしても育てられないのではないか、という不安を抱えている企業様もありますが、これは「ニワトリと卵」の問題で、育てられる環境をつくってから採用する、もしくはすでに実績があるところから採用する、そういったことでは新しい卵がうまれていかない状態になってしまいます。まずはピンポイントで採用しにいく環境が『LabBase』にあるのでそこを一緒にとりにいきましょう、といったような話はさせていただいています。
森田:
口コミづくりを続けるのは大事ですよね。1年目で成果がでるかといったらなかなかでないケースも多いと思いますけれども、繰り返していくと最初のときに頑張った結果がまた次の翌年につながっていくこともありますからね。
森田:去年と(採用成果を)比較することがあると思いますが、私の個人的な意見では、去年との比較というのはあまり意味がないと思っています。やはり市場の環境も違えば、学生さんの志向も世の中の環境を受けやすいので、意味がないというのは語弊がありますが、前年こうだから今年はこう、というのはあまりないと思います。母集団至上主義についても、とくに理系の採用においては全国に大学や研究室があり学んでいる学生が何人いるかわかっているので、数を集めるというよりは、どこの人をどれだけとりにいけばいいのか、どう接触できればいいのか、そういったピンポイントなプッシュができるような体制を作ることが重要だと思います。先ほどOG・OB訪問を使う、という話もありましたが、社員の方をいかに採用に巻き込んでいけるかということも大事だなと思います。オンライン面接によって「30分、1時間ほど学生と話してくれませんか」などといったことが、今までのように大学に出向く移動時間・拘束時間をとらずにできるので、そこらへんをうまく社内の文化として作っていければ強いと思いますね。
山永氏:
今おっしゃっていただいた、どの大学にどんな研究室があってどういう志向をもっていて、といった一つ一つの研究に関する情報というのは非常に重要だなと思っています。教授が替わるなど揺れ動くものや、同じ研究室だったとしても機械学習を使う学生さんもいれば、使わない学生さんもいる等、多くのパターンがあります。ラボデータと呼んでいるのですが、今ラボデータが『LabBase』にかなりたまってきている状況だと思っています。このあたりはバイネームといいますか、企業様のお困りごとにとって、こういう研究室のこういった人たちにアプローチするのがいいのではないか、バイネームで見ていったときにはピンポイントでこういう学生さんがいます、ということをお伝え出来るようには少しずつなっているので、そういったご相談もお受けしたいと思っています。
山永氏:
これは大きい企業様になればなるほど、生じるものだと思っています。まさにトヨタ様の事例はおもしろいと思っております。トヨタ様も、自動運転などモビリティの領域で情報系の学生が望まれているかと聞いてみますと、本当はすごく面白いことをしているのだけれど知られていない事業がある(ので、そちらの事業でも採用したい)そうです。私たちとしてはそういった事業部の皆さまにヒアリングをさせていただきます。現場の方にリクルーターの権限を付与し、直接(データベース上の)学生を見ていただき、ピックアップしていただいてスカウトをしています。現場主導で学生を見ていただいて直接受け皿を用意していただく、こういった形をトヨタ様もつくろうとしています。実際に動き回ってそういった面談も実施されているということも効果的だなと思っています。手前味噌ではありますが、弊社のようなサービスでピンポイントにあたり、現場の体制を整え採用戦略を設計していく、そこをオーバーオールでやっていくことが重要と考えます。
森田:
それができる会社もすごいと思います。
山永氏:
まずはインターンシップ先企業の調査とOG・OB訪問から始めている学生が多い印象です。 『LabBase』利用企業様の場合は、個別面談を受け皿としていらっしゃる企業様が多く、5月・6月時点から面談を開始されている企業様もいらっしゃいます。
(POL社テキスト回答)自社HPや、ATSを活用することで、自社応募を促しています。 独自での告知は、インターンシップから直結した体制をつくっていたり、弊社のようなスカウトツールを使っていただいて母集団形成をしていただいている企業様もいらっしゃいます。森田さんのお話にもあったとおり、オンラインでの説明会を開催するようなこともしています。
(POL社テキスト回答)全体的な早期化が見られます。 オンラインでの接触がメインになり、Web説明会でアプローチ範囲は拡大しやすくなった一方、学生への魅力づけが難しくなってしまったため、企業様目線ではいかに早く接触できるかが他社との違いを作るという点で重要になってきた印象です。 事実、LabBaseのスカウト送付時期も例年よりも前倒しになってきており、全体的な早期化傾向が見られております。
(POL社テキスト回答)コンテンツとして人気なものは、オンライン / オフラインでの違いは特に見られないと考えております。オフラインの時と同様ではありますが、 1)現場の社員と繋がることができる 2)現場の仕事の体験ができる 3)フィードバックを丁寧にしてくれる といった内容が人気です。 実際に自分のスキルなどを活かすことができるのか、具体的に働くイメージができる内容が好まれます。
(POL社テキスト回答)工場見学では、動画を使われている企業様は多いですが、動画の中での工夫が進んでいる認識です。リアルタイム動画配信・360度動画配信といった、動画の形を手を替え品を替えチャレンジしていらっしゃる印象を受けます。そのほか、アバターやVRを利用したツールも増えては来ているものの、正直なところ、まだ「この手法が必ず響きます!」といった正解が決まりきってはいないという認識をしています。
(POL社テキスト回答)自社のターゲット学生の理解、その上での専攻別・属性別に合ったプログラムを組むことが重要だと思います。 また、現場の方との接点増加等で、オンラインでもより学生に目線をそろえたアプローチを行うととても良いのではないでしょうか。
(POL社テキスト回答)オンライン化の進行とともに、学生が広範囲にアプローチしやすくなりました。 学生目線ではメリットも大きい一方、企業様目線では優秀な学生が分散してしまい、母集団形成が例年より難しくなったという声も聞かれます。 貴社環境の前提がない状況で恐縮ですが、考えられる要因として、企業起因、学生起因、外部環境起因のものがあると考えられます。 その中でも、企業起因であればオンライン化による魅力づけにおいて差分が明確化されていない・イベント露出数などが減ってブランディングが低下している、なども考えられます。 学生起因であれば、やはりオンライン化によって、業界業種を絞りづらい環境にあり、動き出しは早いもののある単体の企業への興味や志望度はまだシャープになりきっていない可能性もございます。
森田:
そろそろお時間のようです。山永さん本日はありがとうございました。最後にお一言、お願いします。
山永氏:
本日はありがとうございました。まだまだ弊社としてはお伝えできていない事例もたくさんあります。今後、採用担当者の皆様もお忙しい時期に入って来られると思いますが、22卒採用の成功を願っております。また、23卒に向けては、早期準備が重要であると捉えております。戦略をどうつくればいいのか、マイルストーンをどう引けば良いのか等、小さくても構いませんのでお悩みが生じましたらぜひ相談いただければと思います。僕も採用担当をしていたので、これから年末年始、皆様が忙しくなるのがわかります。どうぞお体には気を付けていただければと思います。以上です。ありがとうございました!
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