地方技術系メーカーを悩ませた
「知名度不足」という課題

鳴谷様
・採用においてどのような課題を感じていらっしゃいますか?
鳴谷:知名度がない。これが最も大きな悩みです。
当社は、話さえ聞いてもらえれば、魅力的に感じてもらえると自負しています。技術力、世界的シェア、若手が挑戦できる社風、アピールポイントが多数あるからです。

鳴谷様
しかし、私たちが地方拠点のBtoBメーカーであることが、最初の壁を非常に厚いものにしていました。地元以外の学生のほとんどは弊社の存在を知らず、合同説明会で声をかけても「聞いたことがない」「業務内容の想像がつかない」と、なかなか振り向いてもらえなかったんです。
中島:さらに苦戦したのは、情報系の新卒採用です。弊社は2020年にIoTに特化した工場を新設し、設計・製造部門をはじめ、あらゆる部署でデジタル化に注力しています。そのため3年前からデジタル人財の採用強化をはじめました。
鳴谷:しかし情報系の学生は、各社取り合いですし、採用競合となるのは、東京の人気のIT企業です。
選択肢がたくさんある中で、当社の話を聞いてもらうことは難しく、採用強化初年度は学生との接触機会をまったく作れませんでした。その結果、情報系の部署の新卒入社は0名。
「何か改善策を打たないと」と、強い焦りを感じていましたね。
辞退者の声から、職種別採用を導入

中島様
・そこで活用したのが『TECH OFFER』なのですね。理系学生への反響はいかがでしたか?
中島:導入したのは、情報系の採用対策のためだけではないのですが、結果として効果てきめんでした。
鳴谷:『TECH OFFER』には、大学の研究室のデータベースが40,000件も掲載されており、当社の業務にフィットしそうな学生にダイレクトにオファーができるようになります。
会社紹介動画や採用サイトなど当社の情報を確実に届けられるようになり、興味を持ってくれる人が大幅に増えました。弊社の抱えていた「話を聞いてもらうまでの壁」を取り払うことができたんです。

中島様
中島:加えて、今まで出会えなかった層の学生とも接点が持てるようになりました。遠方の大学の学生や、合同説明会には来ないまま内定が決まってしまうハイクラス層の学生も、当社の採用面接を受けてくださったんです。
2023年度の新卒採用で20名を超える学生に内定を出すことができました。
・では、情報系の新卒採用はすぐに軌道に乗ったのでしょうか?
鳴谷:いえ、そう簡単にはいきませんでした。この年『TECH OFFER』経由で内定を出した学生のうち、実に8割もの方々から辞退の申し出があったんです……。
鳴谷:他社を選んだ理由を聞いてみると、勤務地に加えて「キャリアパスが提示・確約されているかどうか」が決め手だったということでした。
当社の新卒採用は、もともとは入社数ヶ月後に配属部署が決まるスタイルでした。ですが優秀な学生は、「入社後にやりたいこと」を明確に持っているし、それが叶う環境を求めています。特に、当社が採用を強化している情報系の学生の方は、その傾向が顕著でした。
そこで当社も、職種別採用を導入しました。内定時に配属部署を確約できるよう変更したんです。その結果、次年度からは内定承諾をいただける割合が徐々に増えてきています。
理系女子学生が全国から集結した
大好評就活イベント

中島様
・辞退理由に耳を傾けることで、採用の成果が上がったのは素晴らしいですね。その他で『TECH OFFER』による新しい出会いはありましたか?
中島:理系の女子学生と出会えるようになったのも大きな変化です。いわゆる世間で「リケジョ」と呼ばれる層です。
当社の技術職の女性採用数は、残念ながらここ数年非常に低い水準でした。「職人気質の硬い雰囲気」の技術系メーカーに見えてしまっていたのだと思います。
『TECHOFFER』の担当者の方に相談したところ、「優先的に女性にオファーする機能を作れますよ」と教えていただきました。

中島様
そこで、技術職女性社員とのトークイベントや、女性限定のインターンシップを企画して一斉オファーを送ってみることにしました。
・反応はいかがでしたか?
中島:非常に大きな反響で驚きました。イベントの会場は名古屋にも関わらず、九州や関東など全国各地からたくさんの理系女性が集まってくれたんです。しかも参加者から「こんなことをやってくれる企業は初めてです!」という声まで。
参加者の9割がそのまま選考に進んでくださいました。一度にたくさんの女子学生に当社の魅力を知っていただくことができたため、女性内定者の3分の2は『TECH OFFER』経由となったほどです。
個々に向き合っても「残業65時間減」を
可能にするテクノロジー

左:中島様 右:鳴谷様
・内定から入社するまでの、学生とのコミュニケーションを非常に大事にしていると伺いました。具体的にはどのような工夫をしていますか?
鳴谷:まず、オファーを受諾してくださった方への返信は、24時間以内に個別の内容を返信するようにしています。
中島:「あなたと向き合っているよ」って伝わる返信をすることも大切にしています。例えば、趣味について質問したり、サークル活動の写真を添えてくださった方には「私も同じスポーツをしていました」と、私自身のことを伝えたり。
鳴谷:その後実際にお会いしたときに、メッセージが嬉しかったと話が弾むことも多いですね。
「返事がないとか、テンプレートのメッセージに慣れてしまっていたのに、オーエスジーさんからは私に向けたメッセージがすぐに返ってきたのでびっくりしました」といった声もありました。
中島:もちろん対面でのフォローも大事です。入社前に不安を抱える学生がいたらときにはこちらから会いに行くこともあります。
最初は決して志望度が高くなかった方でも、そうした個別フォローを続けることで「ここまで関わってくださったのはオーエスジーさんだけでした!」と入社を決めてくれることがあるんです。

左:中島様 右:鳴谷様
・素晴らしいですね。ですが、個別の対応にはかなりの時間がかかりそうです。どのように時間を捻出しているのでしょうか?
鳴谷:『TECHOFFER』と同時期に導入した採用管理システム『sonar ATS』など、テクノロジーを効率的に使うことで、学生と向き合う時間が増えました。
ツール導入以前は、採用事務業務に時間をとられ、繁忙期には、2人合わせて月80時間も残業が発生していたんです。その頃は、とてもじゃないけど個別フォローなんてできなかった。
ツールを使うことで、事務作業に割く時間が減り、残業時間は15時間程度に削減できました。その結果、しっかりと一人ひとりの学生のことを考えられるようになったんです。

左:中島様 右:鳴谷様
中島:人事と学生という構図だけにしないことも、工夫のひとつです。
繁忙期は『TECH OFFER』経由で1日に60件ほどメッセージが来ます。それを2人で対応するので、ツールを使っても時間はかかります。
そこで、『TECH OFFER』の研究室や研究内容の情報を活かして、話が合いそうな内定者同士をグループにしてフォローしているんです。かかる時間が半減してもコミュニケーションの密度は維持できますし、さらに内定者同士の絆も深まる。『TECH OFFER』のおかげで、一石二鳥のコミュニケーションができるようになりました。
対等な関わりがリファラルを生む
「記憶に残る採用」

左:中島様 右:鳴谷様
・今後さらに目指す採用活動はどのようなものでしょうか?
鳴谷:徐々に当社の「真の魅力」を伝えられるようになってきました。次は、学生が「自分の魅力」を出せる採用をしていきたいです。
控え室では活き活きしていたのに、面接官を前にするとガチガチに緊張してしまって不合格になってしまう方もいるんです。

左:中島様 右:鳴谷様
中島:面接に来てくれた学生の「素」を引き出したいし、魅力をもっと知りたいです。そのためには、「社員だから」「学生だから」を取っ払って、人と人で対等に向き合わないと。
鳴谷:だから、私たちが本音で話すこともすごく大事ですよね。私たちが一方的にジャッジするわけじゃない。良いところも悪いところもオープンに伝えるし、仕事以外の話もします。最終的に目指すのは「記憶に残る採用」なんです。
中島:人間関係ができていくから、内定者全員を大好きになってしまいます。晴れて内定を承諾してくれると「両思い」。飛び上がるほど嬉しいけど、辞退されてしまったときはもう「失恋」なんです(笑)。
鳴谷:辞退の電話を受けたときは、思い入れがありすぎて泣いてしまうほど。
でも辞退者が、翌年に後輩を送り込んでくれることがあるんです。すごい方だと4人も後輩の方が来てくれたこともあるんですよ。「え、キミもキミも〇〇君の後輩なの!?」って(笑)。お互いの記憶に残れたんだなって、実感できましたね。
学部生時代は面接に不合格だったけど、その後院に進学して再受験してくれた方もいました。成長した姿を見せ合えて話が弾んだのを覚えています。
中島:皆さん、会社への愛情を強く持って入社してくれるので、とても頼もしいし、入社後の活躍が楽しみで仕方ありません。採用を通して、オーエスジーの魅力が記憶に残るよう、これからも努力を続けます。
(取材・執筆:北原 泰幸/企画・編集:井澤 梓・榮田 佳織/
撮影:トパス ジョンキンバルー)