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1dayインターンはどう作る?学生を惹きつけ1dayインターンシップの作り方【採用賢者に聞く 第24回】

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昨今、「1dayインターンシップ」などの短期インターンシップが注目されています。しかし、実施はしてみたものの「いまいち効果が実感できない」「改善点がありそうだけど、どう変えればいいのかわからない」といった声も多くあります。そこで今回は、1日~2日で完結する短期インターンシップにどんな目標を設定し、どのような戦略や準備で取り組むべきかを、株式会社リンクアンドモチベーションの中村氏にうかがいました。

 

中村 優太 
株式会社リンクアンドモチベーション ユニットマネジャー

慶應義塾大学卒業後、新卒でリンクアンドモチベーション入社。入社以来、西日本のインフラ、グローバルメーカー、インフラなど、業界のリーディングカンパニー(大手企業)50社以上の採用コンサルティングに従事。その後、西日本の事業責任者を経て、採用コンサルティング事業部の日本全体の営業を担当。全社MVP、全社マネジャーMVPなど表彰多数。現在は、大手企業向けの採用コンサルティング事業に加え、採用と育成をつなぐオンボーディング事業の新規事業立ち上げを担っている。

インターンシップを開催する最大の目的は「期待」の醸成

短期インターンシップを実施する企業が増えているように感じますが、その背景としてどのようなことが考えられますか?

実はインターンシップの歴史はかなり古く、戦後まもなく新卒採用が始まったころから存在していたようです。その後、学業に支障が出るということで短期インターンシップは禁止となります。しかし、2016年の倫理憲章改正で、再び、短期インターンシップの実施が可能になり、2018年くらいから徐々に増えてきました。
その背景としては、就職マーケットの変化が大きく関わります。積極的な採用を目指す企業は増加傾向にあり、長期インターンシップでは多くの学生に出会うことができません。そこで短期インターンシップを実施して、少しでも学生とのタッチポイントを増やしたいと考える企業が増えてきました。

短期だけに限らず、インターンシップを実施するメリットは何でしょうか?

まず大前提として、ブランディング活動である採用を成功に導くためにはブランド形成の観点である「期待」「満足」「確信」という3つのステップを作っていくことが重要だと言われています。その中でのインターンシップの役割は、「期待」を醸成すること。「期待」とは、会社に対しての期待を形成することです。その企業が「どのような方向性で」「どんな仕事をしているか」を知ってもらい、「期待」を形成していきます。これがインターンシップ実施の最大のメリットだと思います。

「期待」「満足」「確信」は、それぞれ採用活動の中でどのように組み込めばいいのでしょうか?

先ほどお伝えした通り、「期待」「満足」「確信」は企業にとってのブランディングのサイクルとも言えます。採用活動は労働市場に対するブランディングですので、採用活動のそれぞれのフェーズで何を目的とするかを考える必要があります。一般的には下記のような形になります。

・期待
期待を醸成するのは、採用活動全体において「前半」です。そこでインターンシップを実施し、仕事内容や企業の将来性に対するワクワク感を作り出します。  

・満足
事業内容を伝えていくフェーズで醸成されるのが満足感です。採用説明会やリクルーター活動によって、より具体的な仕事内容を理解してもらうことが満足につながります。  

・確信
期待し、満足した内容が間違っていない、と確信してもらうフェーズです。つまり、これまでに説明した内容が社内の隅々に浸透しているかどうか、人・社風・環境に即しているかをリクルーターや面接、内定フォローで実感してもらうことで確信に変えていきます。

「期待」を醸成するうえで、インターンシップでは何を伝えればいいのでしょうか?

仕事内容をそのまま伝達するのではなく、その会社の理念や戦略、事業と接続したDNAを伝達することが大事になります。そうすることで、その会社独自のメッセージとなり、他社と差別化できる期待が形成できます。そして、この期待を何回かに分けて伝えるか、一度ですべて伝えるかは採用戦略の組み立て方次第ですので、単にインターンシップを考えるだけではなく、全体の採用戦略の中でどう位置付けるかも重要となってきます。

1dayインターンシップの成否は制度設計にかかっている

1dayインターンシップを実施しているのに効果が得られないなど、陥りがちな失敗例を教えてください

「勉強になっただけ」で終わってしまうインターンシップをよく見かけます。つまり、業界や会社の事業内容については理解できたけど、その会社で働くことへのワクワク感=期待が醸成できないインターンシップのことです。こういったインターンシップの特徴として、講義形式だったり、視聴形式だったり、オンデマンド形式だったりというのが非常に多いです。つまり、一方通行の情報提供で行われていたり、自社の伝えたいことだけを伝えていたり、といった場合です。

一方通行の情報提供ではなくインタラクティブで行うようなインターンシップのほうが良いのでしょうか?

確かにそうなのですが、それだけではありません。「誰に対して」「どのようなメッセージを」「どのように届けていくか」というのが採用戦略の基本です。つまり、インターンシップでもっとも大事なのはコミュニケーション設計になります。ターゲットを明確化し、自社が届けるメッセージを磨き、そのメッセージをどのタイミングで誰から伝達するか、そのコミュニケーション設計が重要になります。

・誰に対して
多くの企業が大学や学部といったラベルで学生の属性分けをしているのではないでしょうか? それだけではなく、モチベーション(志向性)という動機での属性分けを行うことを薦めています。つまり、どんな志向性で、どのような欲求を持っているのか、といった属性分けを行うことが重要です。  

・どのようなメッセージ
業界の中での自社の立ち位置や強み、理念や成長戦略、事業内容など、伝えるべきメッセージは多岐にわたります。だからこそ、「誰に対して」の部分で設定したターゲットが求めている魅力を3C(ターゲット学生、採用競合、自社)の側面から抽出する必要があります。  

・どのように届けるか
インターンシップは期待醸成のフェーズで、採用活動が進むにつれて「満足」「確信」のフェーズへと移行します。だからこそ、採用活動全体の流れを把握して、その中で期待を醸成するためにはどうするか、を考えるべきだと思います。つまり、全体のコミュニケーション設計を行ってから、インターンシップの設計を行う、という順番が非常に重要です。

改善を行うためにはどのようなことに気をつければよいでしょうか?

学生が「何を期待」していて、「何に満足」しているかを診断・調査するのがファーストステップです。弊社で行っているアンケートのフレームがあるのですが、縦軸が「期待度」、横軸が「満足度」になっています。この期待度と満足度の両側面で、人が組織を見る観点(組織心理学をベースに64項目に分けています)で情報を集め、分析をかけます(例:経済報酬、成長実感といった項目)。

1dayインターンシップを成功させるために必要なこと


1dayインターンシップを実施した成功例を教えてください

●事例①:0.5日インターンシップの実施
通信業界で、新しくグループ会社になった会社が新卒採用で50名を採用するという目標を掲げました。親会社は有名企業で企画業務を行う役割を担っているのに対して、この会社は販売業務を担っています。事業内容も大きく違うので親会社の名前を出しても苦戦することは見えていました。ターゲットのイメージを「いろいろ考えて踏み出せない」よりも「まずは動く人材」、モチベーションとしては「開拓したい」「挑戦したい」と設定。
名前も知られていない会社ですし、少しでも気軽に足を運んでもらうために「ハーフデイインターンシップ」を実施しました。さらに伝えるべきこととして「社会に出て大切なこと」「成長観点」を学べる場を作ろうという提案をし、実行しました。
ハーフデイインターンシップでは、「この会社なら成長できそう」「キャリアを積めそう」と感じてもらうことを第一に、具体的な事業内容や業界の特性を次のフェーズである長期インターンシップで伝えるようにした結果、50名の採用目標を達成できたというケースです。

●事例②:メッセージの伝え方を工夫
次の事例は、重厚長大型のメーカーです。有名な大企業なのですが、「堅そう」「時代遅れ」といったイメージがつき、経営基盤はしっかりしているのですが、低成長にとどまっていました。この会社が400名の採用目標を掲げたときの事例です。
事業の低成長が続いていたこともあり、新しい領域に進出したいという意向から、採用したい人材を「理系で技術営業もしていくコミュニケーション能力を備えた人材」「スペシャリスト気質を持ちながら、他社と協働するモチベーションを備えた人材」と設定しました。当然ながら、そのような学生は理系学生の中にはなかなかいません。そこで学生に伝えるメッセージの内容と伝え方を見直すことにしました。
理系の学生は、専門領域を磨いているので、培った知識や技術を使えるかどうか、が非常に重要になってきます。彼らにキャリアや業界のことを伝えても響かないので、最初から仕事内容にフォーカスした1dayインターンシップを設計。メッセージの開発としては、技術が社会の中でどう使われて、どんな価値を生み出しているか、まで掘り下げました。
その中で、インターンシップのプログラムにその会社のDNAを訴求するために、仕事における判断を求められるトラブルが起きた際の行動判断をメインに設計しました。通常業務の中で起きるトラブル対応は、実はその会社のDNAや価値観が宿ります。そういったトラブルに向き合うケーススタディを1dayインターンシップのプログラムに組み込んだことで、内定辞退率が改善され、400名の採用目標を達成できました。

最後に1dayインターンシップを企画・実行するうえでの流れや押さえておきたいポイントを教えてください


ターゲット設定→全体戦略の構築→メッセージの設定→運用方法の設定という4つのフェーズで考えることが必要です。

・ターゲットの設定
定量・定性の両側面から欲しい人材を設定します。定量という側面からは、適性検査を実施し、ハイパフォーマーに近い傾向値を定めます。定性面では、経営者やマネジャーに「将来的に求める人材」をインタビューし、属性ラベルだけではなく、モチベーションという側面からもアプローチし、具体的なターゲット像を導くのが良いと思います。  

・全体戦略の構築
ターゲットを設定したら、そのターゲットに対してどのようにアプローチするか、という全体戦略の構築を行います。他社の採用戦略、学生の動向などを見ながら、どのようなタイミングでどのようなメッセージを伝えるかを決めていきます。1dayインターンシップの目的は、全体の採用戦略の中でどのように期待感を高めるか、という部分なので全体戦略の構築が非常に重要になります。  

・メッセージの設定
全体戦略の構築ができれば、1dayインターンシップの中でのメッセージも定まるはずです。そのメッセージをどういったプログラムに落とし込んでいくか、ということを考えてインターンシップの設計を行います。キャリア、業界、事業、仕事など、語るべき内容によって作り方が異なるので、それぞれに分けて作りこんでいくことが大事です。  

・運用方法
インターンシップ設計ができたら、運用方法を決めなければなりません。現場の社員を巻き込みながら運用するなど、さまざまな方法がありますので、自社の状況に合わせて運用方法を構築することをおすすめします。

1dayインターンシップはあくまでも採用活動の一部分です。とはいえ、学生が初めて企業と接する場なので、しっかりと設計を行う必要があります。どのようにしたら「期待感」を醸成できるか、そこをしっかりと考えることが大切です。

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この記事の著者
中村 優太
中村 優太

慶應義塾大学卒業後、新卒でリンクアンドモチベーション入社。入社以来、西日本のインフラ、グローバルメーカー、インフラなど、業界のリーディングカンパニー(大手企業)50社以上の採用コンサルティングに従事。その後、西日本の事業責任者を経て、採用コンサルティング事業部の日本全体の営業を担当。全社MVP、全社マネジャーMVPなど表彰多数。現在は、大手企業向けの採用コンサルティング事業に加え、採用と育成をつなぐオンボーディング事業の新規事業立ち上げを担っている。

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