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インターンシップを本選考につなぐための、アクションとコミュニケーション【採用賢者に聞く 第33回】

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インターンシップから内定までの選考フローの中で、「応募が集まらない」「選考/内定辞退が多い」などの悩みを抱えている担当者の方もいるのではないでしょうか?

インターンシップを効果的に実施するとともに、その後のアフターフォローで学生の応募増・辞退減を実現するためには、どのような施策やアクションが有効なのでしょうか。元・リクルートの株式会社人材研究所の代表・曽和利光氏に、リクルート事件の渦中に同社で採用成功に寄与した豊富な実績をもとに、ノウハウを伺いました。

夏のインターンシップで狙うターゲットは“就活意識低い系”

インターンシップを、採用につなげられないという声をよく聞きます。その原因はどこにあるでしょうか?

どれだけフォローに力を入れても、本選考に来てくれない。内定を承諾してくれない。これは、採用活動において“あるある”の問題です。

しかし、多くの企業が気づいていないこれらの問題の根本は“ターゲティングを間違えていること”なのです。夏のインターンシップを頑張る学生は、基本的には“就職活動意識高い系”であり、そんな学生が志望するのは、大企業、有名企業、人気企業です。日本は99.7%が中小企業 と言われていますが、この学生たちの眼中には、残念ながら入っていません。もちろん、大手に落ちてしまった優秀な学生にアプローチできる可能性もありますが、その確率はとても低いと言えるでしょう。

つまり、採用につながらないと悩んでいる多くの企業は、もともと来てくれない学生を集めて、フォローに労力をかけて、報われない状況だと考えられます。

では、夏のインターンシップで、どのような学生をターゲットにすべきでしょう?

言葉を選ばずに言うと、“就職活動意識低い系”の学生です。「周りの学生が就活を始めた」「インターンシップに参加しろと言われた」というように、なんとなく就職活動を始めた層がターゲットで、そのような学生の受け皿となるインターンシップを目指すのが肝要です。“就職活動意識低い系”と言っても、なかには研究や部活が忙しすぎて、夏の就活に力を入れられないという学生もいるので、実は優秀な学生も多いのです。

ただ、一般的なアプローチの方法では、“就職活動意識高い系”が集まってしまうので、あえて“就職活動意識低い系”を狙うためには、次のような方法がいいと考えられます。

■リファラルによる集客

“就職活動意識低い系”は、ナビを熱心に活用していないので、先輩などからのリファラルによる集客が効果的です。たとえば、内定者に後輩を集めてもらうのは、有効な手段の一つだと思います。なお、研究や部活が忙しい学生に対しても、先輩からの勧誘は効果的です。

■就職支援系のコンテンツを用意する

インターンシップで、純粋におもしろいコンテンツをつくると、“就職活動意識高い系”の目には止まりますが、今回のターゲットではありません。

“就職活動意識低い系”の場合は、就職支援系のコンテンツが有効です。このコンテンツに反応するのは、今は意識が低くても、就活が大事なのはわかっていて、「頑張らなきゃいけない」と思っている学生です。しっかりフォローすることで、振り向いてくれる可能性が高くなると思います。

自社アピールではなく、就活支援のフォローに徹する

就職支援のインターンシップに参加してくれた学生に対しては、どのようなフォローが有効でしょうか?

インターンシップに来てくれた学生に、自社のことをどんどんアピールしたい気持ちはわかります。でも、そこはグッと堪らえてください。

というのも“就職活動意識低い系”の学生は、「興味がないわけじゃないけど、そもそも“就活”って何かわかってないんですけど?」みたいな感覚です。就活支援に徹したほうがリレーションが取りやすく、信頼関係の構築や、学生理解に役立てることができるでしょう。具体的には、次のように“学生の就活のプロセスに沿って”フォローするのが有効と考えます。

(1)就活のとっかかりになる「自己分析」 の支援

自己分析のワークショップを行い、自分の強みや弱みを理解してもらいます。自分を知る作業を、一緒に取り組むことで、学生と人対人のコミュニケーションができ、リレーションが取りやすくなります。

また、採用側も学生の人となりを知ることができるので、今後の訴求ポイントのヒントにもなるはず。まさに、一石二鳥の施策と言えます。

(2)業界を絞れるように「業界説明」から 始める

自分の特徴がわかったら、次に学生が思うのは、「関心のある業界を知りたい」ということです。まだ、会社を選ぶ段階ではありません。そのため、大括りで業界を説明するインターンシップにニーズがあります。

たとえば、自社が専門商社なら、まずは「商社」という広い領域から説明するイメージです。そこには、総合商社の話や、円安による市場への影響といった話も入ってくるでしょう。そのような全体の話をするため、自社を一例として使うぐらいのさじ加減が、「業界を知りたい」と考える学生のニーズにはマッチします。

(3)会社説明は「人」の切り口から攻める

業界への関心が高まり、そのなかの一つである自社にも関心を持ってもらえたら、いよいよアピールのターンと勇み足になりがちですが、“就職活動意識低い系”の学生に会社の仕事や事業の話はまだ早すぎます。

なぜなら彼らは、社会人になること、働くこと、仕事のおもしろさなど、職業観についてあまりイメージできていないのです。そのため、社会人の“一例”として、自社で活躍している先輩社員から、一日の仕事の流れ、過ごし方、仕事のやりがい、普段考えていること、就活全般で役立つことなどを、生の声で伝えてもらうと、学生の胸に響きやすいと思います。

(1)~(3)を通じて学生に寄り添い続けることで、気がついたら自社にも興味を持ってくれているというのが、王道の学生フォローだと考えます。就活一般に役立つ体裁で、例として自社を使っているので、学生は自然と自社にも目を向けてくれるはずです。

この3つのコンテンツを提供すれば、スケジュール的にはだいたい本選考の時期になるので、ほしい学生にはダメ元で「うちも受けてみませんか?」と声をかけてみるのもよいと思います。逆に、ここまでやって学生に興味を持たれなければ、脈はないでしょう。

インターンシップ参加者に、選考では特別感を

選考段階での辞退を防ぐためには、どのような取り組みを行うべきなのでしょうか?

インターンシップに参加してくれた学生は、学生生活における大切な時間を投入してくれたのですから、それに報いるだけの特別感を提供したほうがよいと思います。

わかりやすい施策は、インターンシップ参加者を優遇する特別選考コースを設けることです。すでに自己分析のインターンシップで人となりを把握しているので、ES不要でいきなり面接できるなど、入口はなるべく低く、広くしてあげてください。自社とのマッチングは、その後の選考で審査すればよいのです。それが、インターンシップ参加者を本選考につなぐ際の武器になります。

逆に、そのような特別扱いがないと、学生のモチベーションとしてはマイナスに働くでしょう。最終的に自社に決めるかどうかは学生の意思ですが、それは内定後の判断。選考段階は、「受けてください」というスタンスで構わないと思います。

選考中のフォローとして、有効な施策があれば教えてください。

選考中の受け皿 施策 として、インターンシップ参加者のコミュニティーをつくるのは一つの手です。お得なコンテンツの告知や、面接の感想のヒアリングなどを通じて、特別感の付与に役立てられます。

また、伴走担当をつけるのも良いでしょう。面接後のサポートとして、学生が面接で十分に伝えきれなかったことを聞き出し、伴走担当が代わりに面接官に伝えるのもありです。何より、インターンシップから学生を見ているので、面接官に伝えられる情報は、できるだけ多く提示したほうがよいと思います。

■培った信頼関係のもと、関係者を総動員しよう

内定辞退を防ぐためには、どのようなコミュニケーションやアフターフォローが有効でしょうか?

信頼は人対人の間で生まれるものなので、インターンシップやその後のフォローで関わった社員にお願いして、どんどん学生と会って口説いてもらうのが、一番効果的だと思います。

これを可能にするには、学生が誰といつ、どのような接点を持ったのかという、採用活動履歴を明確に管理しておく必要があります。たとえば、インターンシップで出会った目ぼしい学生は、全員トレースすることをおすすめします。便利に管理できる採用専用のCRMのようなツールもあるので、業務の効率化が必要な場合は、導入を検討してもよいでしょう。

リレーションで引っ張るのは、会社選びとしては本質的ではないかもしれません。しかし、日本のカルチャーとして、「何をやるか」より、「誰とやるか」を重視する傾向があります。ここは、採用成功のためにリレーションを活用するほうが得策だと考えます。

25卒から、ますます激化するインターンシップに備えて

最後に、学生のフォローに力を入れたいと考えている採用担当者へメッセージを。

2022年6月13日、政府がインターンシップでの評価を、条件付きで25卒から採用に利用できることを決定しました。

【インターンシップでの評価を利用できる条件】
・実施期間は5日以上(専門的な内容を含む場合は2週間以上)
・実施機関の半分以上は、職場の就業体験にあてる
・実施時期は、学部3~4年次の長期休暇に限る  

今後、日系大手が本腰を入れ、インターンシップに大挙して来ることが予想されます。インターンシップにおいても、学生獲得の競争は激化していくでしょう。どうしても、採用に関するリソースをインターンシップにかけられないのであれば、撤退して別の採用ルートの開拓も考える必要があるかもしれません。

ただ、大手が狙う学生とターゲットをずらせば、可能性は十分あります。そのなかで“就職活動意識低い系”は、大手もあえては踏み込まないターゲットで、有望な人材も含まれている領域です。自社の採用戦略やリソースなどを含めて吟味した上で、チャレンジしてみる価値はあると思います。

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この記事の著者
曽和 利光
曽和 利光

株式会社人材研究所
代表取締役
https://jinzai-kenkyusho.co.jp/

リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験、また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や情報経営イノベーション専門職大学客員教授も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

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